ヤフオク無念…。

歴史コラム
ヤフオク無念…。

本日はまた、ひときわ暑いですね。研究室のある実験棟F館は、廊下の窓が開かないので風が通りません。ま、私の研究室も窓が開かないので、風は通りませんが…。ただ、エアコンをつけている分は涼しいので、廊下に出ると本当にムッとします。

さて、今日はちょっと愚痴です。Yahoo!オークションで狙っていて古文書が落札できませんでした(T_T)ちょっと記録を調べてみましたら、私が最初にYahoo!オークションで古文書を落札したのは、2003年の9月26日のこと。学園史資料センターが代々木キャンパスから湘南キャンパスに引っ越してきた年でしたね。家も引っ越す前でした。それから2006年まで購入を続けています。古文書講読などで現物を見せながら、授業をできないかなと思ったからでした。でも、それから私が古文書の授業を持つことはなかったですね(^^;)

こちらがその古文書です。こうして箱単位で出品してくれるといいんですよね。よくバラバラにして出品する業者や人がいますが、そうするとその時点で史料が散逸したことになりますから、残念です。この古文書は、鷲見という幕府御家人の史料でした。「明治三拾六年六月造之 松浦氏」は中身とは関係が無いみたいです。一番上にある小横帳「芸地日記」は慶応2年(1866)の長州征伐に出陣した際の記録でした。これでも当時は1万円台で買えたかと思います。そもそも古文書を買わなくなったのは、授業を受け持たなくなったこともそうですが、落札価格が次第に上がっていったこともありました。定職がない身ではなかなかそうそうお金は出せません。

そんな中で今度狙っていたのは、この古文書です。

「朝鮮来朝記 全」とあります。朝鮮通信使来朝(来日)の記録です。中身をみると、寛延元年(1748)の朝鮮通信使に関する記録で、延享3年(1746)から記録が始まっています。なぜ、これを欲しがったかというと、実は寛延使節というのは、特別な使節だったのです。使節そのものが特別だったのではありません。迎える側が特別だったのです。

寛延使節は、9代将軍徳川家重の将軍襲封を祝う使節でした。この前は享保4年(1719)に8代将軍吉宗の襲封を祝う使節が来ています。使節を迎えるためにはそれ相応の準備が必要です。一行は400人ほどの大人数ですし、対馬藩の役人もついてきます。来朝時も帰国時も一行を通行させるための人足と馬を準備しなければなりません。吉宗の前、正徳元年(1711)の家継襲封の通信使までは、淀から江戸までの東海道では、周辺の村々が人馬を負担していたのですが、吉宗はこれを江戸町人の請負に替えます。

ところが、家重のこの寛延使節ではまた周辺村々から徴発することになります。そうすると、実際に徴発したのが40年近く前になりますので、どうしたらいいのか、幕府も村々もよくわかってないのです。だから、寛延使節については沿道の村々にこうした記録がたくさん残っています。正徳以前はそもそも記録自体が少ないのです。さらに次の11代将軍家治襲封を祝した宝暦14年(1764)使節はまた江戸町人の請負に戻しますから、また記録は少なくなります。

とにかく久しぶりに人馬を負担しなければならないとなると時代も社会も変わっていますから、さまざまな問題が起きます。その問題を考えることによって、広く言えば享保期-18世紀前半の時代背景、社会の変化というあぶり出せるのです。朝鮮通信使の研究を通じて、当時の地域社会の在り方やその変容がわかるというのは、寛延使節以上に分析できる対象はないのですね。それはまさに江戸時代中期の社会のあり方、地域社会の変容を分析できる素材となるものでした。だから私自身はその記録をなるべく集めてきましたし、『寒川町史』や『新横須賀市史』にも積極的に史料を収録してきました。

ただ、その成果はまだ公開していませんので、まとめようかなと思っているところです。このYahoo!オークションに出品された古文書は、自分のものであれば翻刻しても問題ないですから、その研究書に翻刻して収録したいと思っていました。延享3年(1746)の準備段階から概括的にわかる史料であると思われるからです。史料を残すには翻刻することが最良の手段でもあります。多くの複製を残しておけるからで、そうなれば後の研究者もそれを新たな視点で研究することもできます。

でも、さすがに落札価格が23万を超えるようでは手が出ません。普通に古本屋で買う値段よりもずいぶんと高くなってしまいました。20万円までは覚悟したのですが、無理でした。残念です。

と、今日は本当に愚痴でした(>_<)オークションはやっぱり難しくなりました…。

投稿者プロフィール

馬場 弘臣

馬場 弘臣東海大学教育開発研究センター教授
専門は日本近世史および大学史・教育史。
くわしくは、サイトの「馬場研究室へようこそ」まで!

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