お題No.16 韮山江川代官御仕置条目 その1

Let's古文書
お題No.16 韮山江川代官御仕置条目 その1

11日(金)に伊豆国田方郡土手和田村(静岡県伊豆の国市韮山)に残る江川代官の「御仕置条目」をアップして、今後これを少しずつ読んでいきましょうと書きました。史料はGoogleドライブにアップしていて誰でもダウンロード(もしくはコピー・アンド・ペースト)できるようにしています。んが、どうも読み取れない方もいるようです。改めてURLを貼っておきます。下をクリックすれば見られるはず何ですが…。

https://drive.google.com/drive/folders/1Sr-Cn9tum26fyqIdDrRKK4NpnrGvAIWt?usp=sharing

お試しください。なにせファイルが大きいのでこちらからダウンロードするのは無理みたいなので、この方法をとりました!

では!読んでみましょう!

それでは実際に読んでみましょうか?本日ははじめから3か条を読んでみます。

まずは、「白文」である原文書のくずし字を読んで、句点(、)と返り点をつけます。これを「釈文」と私どもは呼んでいます。正式というより、今までこれを何というか適当な語句がなかったので横須賀市史を編纂する際に、説明のために決めました。

Webでは縦書きが表現できませんので、画像を貼っておきますね。

【書き下し文】
(表紙)「御仕置御条目 全」
    条々
一御公儀より前々仰せ出だされ候御法度書御ケ条之の堅く相守り申すべく候事
一常々親孝行仕り、主従礼儀を正し、夫婦相宜しく、兄弟・親類仲よく相続仕り、万端実躰にもとづき各家業大切に致すべき事
一五人組も儀、最寄り次第五軒宛て組合、子供・店借・地借・寺社門跡・下人等に至る迄諸事吟味仕り、悪事これ無きよう仕るべく候事

【解説】
手始めに3か条だけ読んでみましょう。
1条目は、公儀の法度つまり幕府の法令を守るようにという条文で、「五人組帳前書」では常套句ですね。とくにここは韮山代官所領ですから。

2条目は、主従の礼儀を忘れないこと、夫婦は仲良くすること、兄弟や親類も仲良くして相続すること、すべては実態にもとづいて家業を大切に勤めなさいと言っています。
儒教を基礎とした封建的道徳観と言ったらいいでしょうね。相続と家業など江戸時代的な「家」觀の重視も合わせて読み取れます。

3条目は五人組の規程ですね。最寄りの家を5軒ごとに組み合わせること。その際に子供や店借、地借、寺社門跡、下人などにいたるまで吟味して悪事のないようにと申し渡しています。治安と年貢上納に関する相互監視のシステムとしての五人組の規程としては、ちょっと柔らかいですね。
ちなみにここでは子供や店借、地借、寺社門跡に下人なども五人組に組み込まれたことが分かります。店借は借家人、地借は借地人と考えて構いません。下人は学術的に「隷属農民」と呼ばれるもので、土地や農具などの生産手段を持たず、主家の労働力となることで生活している人びとです。第2条目の主従というのは、この意味で使われると思っていいでしょう。「下人」などは土地も農具ももたず、主家に住み込みで家族も持たないというのが普通ですが、ある程度の農具などは持っていて、家族を持つことが許された者もいます。名子とか被官とか呼ばれる人たちです。「隷属農民」といっても、さまざまな層がいます。江戸時代はそうした層が少なくなる時代ですが、ゼロになる訳ではありません。
なお、土地を借りて自分の持っている農具で耕して、生産物を土地を所持する農民に対して差し出す場合は、地主と小作と言います。

【読解のポイント】
やっぱりここは「候」(そうろう)という文字の異体字でしょう。下に写真を貼っておきますが、これは頻繁に使われるので覚えておきましょう。
旧字も多いですね。筆写は基本的に新字を使うことにしています。ここでは「條」→「条」、「禮」→「礼」などですね。
異体字としては、先の「候」の他に2条目の「最寄」の「最」という文字は「うかんむり+取」となっています。

では、本日はここらへんで!

投稿者プロフィール

馬場 弘臣

馬場 弘臣東海大学教育開発研究センター教授
専門は日本近世史および大学史・教育史。
くわしくは、サイトの「馬場研究室へようこそ」まで!

『お題No.16 韮山江川代官御仕置条目 その1』に2件のコメント

  1. 若生義明 より:

    「Let’s古文書」をいつも楽しみにしております。お題No.16(その1)の解答中、1条目、➊「従御公儀」とありますが、本文に「御」はありません。同じく1条目、➋「御法度書御ヶ条」とありますが、本文に「書」はありません。3条目、➌「五人組之儀、最寄次第…」とありますが、「五人組之儀、家業最寄次第…」ではありませんか。同じく3条目の2行目➍「寺社門跡」とありますが「寺社門前」では?、その下➎「下人等・」は「下人等二」ではありませんか。

    • 馬場 弘臣 より:

      若生義明様
      メールでもお礼申し上げましたが、改めてありがとうございました。何ともお恥ずかしい間違いで、修正しようとはしたのですが、なぜか過去の投稿が修正できない。仕方がないので、一段落したら、ご指摘の点を含めて修正版をアップしたいと思います。

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