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古文書を筆写する その4 続・ワープロソフトの使い方

「古文書を筆写する」として、原稿用紙への書き方から書き始めて、3月9日の記事でワープロソフトの使い方について紹介しました。ワープロソフトは一太郎を使っていますので、ワードを使う際にはどの機能を使うか工夫が必要でしょう。

それはせておいて、その後、例えば、文字の左側に文字を打つにはどうしたらよいか、返り点はどうするのか、といった質問が寄せられました。

ますは返り点についてですが、一太郎は漢文機能があって、返り点についていえば、この機能で普通に入れることができます。レ、一、二点はもちろんのこと、甲、乙、丙、天、地、人までつけることができます。

このように細かく指定することができます。ただ、江戸時代は基本的にレ点、一・二点、上・下点くらいしか使いませんので、私はこれも一太郎のキーボードマクロ機能を使って、レ点なら左寄せで8ポにして入れられるように操作し、それを「Alt」キーを押しながら数字の「3」を押せば自動的に入るようにしています。その方が早く入力できますから。

というより実は、この漢文機能が追加される前にこのマクロを使っていましたので、今でもそのまま使っているというのが真相です。ただ、やはり入力しているときにはなるべく手軽にしたいし、なるべくキーボードから手を放したくないですから、やはりキーボードマクロを使って作成した方が便利です。

それからこの漢文機能をみていただいたら分かるように、文字の左側にも文字が入れられるようになりました。つまり左右に文字を入れられるのですが、残念ながら、入れられるのは仮名文字だけなんですね、残念なことに…。

文字を左側に入れたいという要望で多いのは「みせけち」を入れたいということが大きいですね。「みせけち」というのは、古文書で抹消された部分に下記のような記号を入れることです。

これが「みせけち」で、この図は外字で作成したものです。だから残念ながらこの文字を漢文機能を使って、文字の左側に入れることはできません。まぁ~私自身はすでに「みせけち」を使うことは諦めていまして、抹消部分があれば、そのまま抹消の機能を使って、文字の真ん中に線を引くようにしています。それで充分読めますからかまわないのではないかと思っています。

この他にもいくつか紹介しましょう。

1番目は、本文が10ポイント(以下、10ポなどとします)の場合で、肩書を行間に入れるという操作を数値化したものです。本文9ポで肩書が7ポだと当然、数値が変わってきます。

2番目は行間に( )で注を入れるところですが、これはルビ機能を使って入れています。3番目の行間に文字を追加したり、また抹消部分で書き直しがある場合もルビ機能を使っています。抹消部分は、先に述べましたように抹消線をそのまま入れています。

こちらは4番目、行間を詰める場合の改行幅を示したものです。行間を詰める場合も半分だけ詰める場合を「2分詰め」といい、べたっと詰めてしまうことをそのまま「ベタ」といいます。ここでは、10ポの場合と9ポの場合の2分詰めとベタについて改行幅の数値を上げておきました。

こちらは5番目、二行割りの方法です。二行割りというのは、本文の文字に対して、その上下に、二行に分けて文字が書かれている場合を示します。

こちらも質問にあったものですが、方法としては2つあります。①4番目の行間詰めを使う場合と、②「上下付き文字」という機能を使う場合です。文字が続いておらず、改行を考えなくてよい場合は、①の行間詰めを使う方がやりやすいですね。②の「上下付き文字」機能は、「上付き」と「下付き」に自由に文字が入れられますから、文章が長い場合などはこちらが便利です。ただ、改行を伴うほど長い場合は何文字入れるか計算しなければならないから、やはり面倒ですね。私も場合、もう諦めて、例えば〈 〉部分は本来二行割りであったとして、一行で表記したりもします。刊行予定の「吉岡由緒書」はやたら二行割りが多いですから、そのようにしています。

なお、「上下付き文字」を使う場合は、本文の50%の大きさを指定して、二行割り部分は本文の倍のサイズにすると、1行にぴったりおさまることになります。つまり、本文が10ポであれば、二行割り部分は50%を指定して、その部分は20ポにしておくということです。ここら辺はやってみないと分かりませんよね(^^;)

これらのテクニックを駆使して筆写してみたワープロ原稿を3点ほど消火しておきますね。

こんな感じです。所詮、といったら失礼ですが、ワープロには機能的に制限がありますから、何かは諦めなければなりません。ただ、レイアウトの決め事をきちんと決めて、なるべく美しく見えるように組んでいけば、江戸時代の古文書であれば、ワープロでも充分史料集を作ることは可能だと思っています。

これからそれを実戦して翻刻していきます。取り敢えず『幕末風聞集』を復刊して、「吉岡家由緒書」を翻刻する予定です。

投稿者プロフィール

馬場 弘臣東海大学教育開発研究センター教授
専門は日本近世史および大学史・教育史。
くわしくは、サイトの「馬場研究室へようこそ」まで!
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