お題No.002の回答 質地証文

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お題No.002の回答 質地証文

お題No.002の回答です。なお、古文書の筆耕にあたって漢字はすべて新字体を使っています。

お題No.002の借用証文

お題No.002の筆耕

 

【書き下し文】
年季に相渡し申し地所証文の事
高壱斗五升                   字土手和田分
一屋敷壱畝拾五歩          瀧山境
西
取米七升七合                 堀田付
高弐斗八升七合              同断
一上畑四畝歩                        同 所
南西
取米壱斗六升四合              田付
此代金弐拾六両也
右は去る未御年貢皆済に差し支え、書面の地所相渡し代金慥に請け取り申し、御年貢相納め候処実正也。年季の儀は当申より卯迄弐拾ケ年季に相定め、右年季中貴殿差し入れ、諸役・御年貢御勤めなさるべく候。年季来り代金返済相成り候らえば、地所相違なく御返しなさるべく候。万一その節金子差し滞り候らえば、此証文を以て永々御支配なさるべく候。尤も右地所に付き、外より違乱申す者一切御座なく候。後日のため連印証文依って件の如し
土手和田村
売主
万延元申年三月日                平兵衛
金谷村
親類
長兵衛
組合
八郎右衛門
証人
仁兵衛
山木村
弥右衛門殿
前書の通り相違なく御座候に付き、奥印仕り候。以上
名主
久左衛門
【解説】
動産であれ、不動産であれ、物件を相手に渡して金銭を受け取れば「売渡し」であり、借金の担保として一時的に預け置くものを「質」という。土地の場合は「質地(しっち)」となる。この証文には質地の文言(もんごん)はないが、内容的には質地証文である。
土手和田村の平兵衛が屋敷地1畝15歩(45坪)と上畑4畝歩(120坪)を担保として、20年の年季で金26両を借用している。利足の記載はない。幕府法では年季は10年を上限とするとある。借金の額も高額であり、利足分を含めた特別の処置かも知れない。最後に名主が奥書をして印鑑を押している。保証のためで、これを奥印という。借金の形態としては最も正式な形態である。ただし、20年目になっても元金が返せなかった場合は土地は相手にわたることになる。これを「流地(ながれち)」という。いわゆる「質流れ」である。
ただし、万延元年といえば西暦で1860年となり、20年後は1880年で明治13年にあたる。地租改正も終わっていると思われるが、この土地がどうなったのか、気になるところである。

投稿者プロフィール

馬場 弘臣

馬場 弘臣東海大学教育開発研究センター教授
専門は日本近世史および大学史・教育史。
くわしくは、サイトの「馬場研究室へようこそ」まで!

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