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新年号「令和」狂騒曲

2019年の4月1日、新年度が始まりました。2019年度も1年を切ったわけです!このサイトもリニューアルして2年が経ちました。本当に光陰矢の如しですね…。この2年で何か大きく変わったことはないけれど、なかなか思いどおりには書けませんね。というより、毎日書くということいかに難しいか。それもいくつかのコーナーを書き分けるのは…(^^;)

新元号は「令和」

さて、今日は今上天皇の譲位にともなう新元号の公表日でしたね。テレビをつけるとその話題でもうひっきりなし。相変わらずですな、マスコミ。で、午前11時45分頃ですか?菅官房長官から「令和」と発表されました。

初めて見たときの正直な感想は、「令」という字にちょっと違和感を覚えました。江戸時代は変体漢文ですが、「令」は返読文字で「~せしむ」と読ませます。使役助動詞で、「~させる、命じる」といった意味ですから、「和」を強制されているような感じがして…。しかも「令」が元号で使われるのは初めてだとか。でも、『広辞苑』によれば、(1)命ずること、いいつけ。(2)おきて。(3)長官のほかに(4)よいこと、めでたいこと。例)令名。(5)他人の家族などを尊敬して言う語。例)令息・令嬢・令夫人などの意味もありました。さしずめ(4)ですね。

ということで、発表の直後からTwitterを追っていきますと、これがなかなかおもしろい。安倍首相が発表した通り、新年号は「万葉集」から採用したとのこと。漢籍以外の国書から採用したのは、そう初めてのことです。

「万葉集」と「帰田賦」

万葉集」は巻5(815番歌)「梅花歌三十二首并序」の題辞(だいじ)にある「于時初春令月気淑風和梅披鏡前之粉蘭薫珮後之香」の部分で、「時は初春のめでたい月、空気は美しく、風も和やかで、梅は鏡の前で装うように白く咲き、蘭は身に帯びた香りのように香り立っている」とかいう意味になるそうです。もっといえば「時は初春のよき月、空気は淑(しと)やかで風は和み、梅は鏡の前の美女が装う白粉(おしろい)の粉のように白く咲き誇り、蘭は通り過ぎた美女の残り香のように香っている」となるそうです。白梅なんですね。いずれにしても、そうなるとなかなか悩ましい題辞ですな(^^)こちらがその原典です。

万葉集

ただし、これには典拠があって後漢の学者である張衡(78年~139年)の「帰田賦」(文選巻15)にある「於是仲春令月、時和気清、原隰鬱茂、百草滋栄」がそれで、「是に於いて、仲春の令月、時は和し気は清む、原隰(げんしゅう)し鬱茂(うつも)し、百草(ひゃくそう)慈栄(じえい)す」と読むようですね。「令月」は、(1)めでたい月。すべて物事を行なうのによい月。(2)陰暦2月の異称(『広辞苑』)という意味があるそうです。

新元号にまつわるエトセトラ

まぁ~、国書といってもこの時代に中国の影響をまったく排除することなんてあり得ないでしょう。とはいえ、Twitter上では、これをコピペだという風聞がかなり広まっています。百田尚樹氏の『日本国紀』に対する反感などもあるようですが、ポジティブに考えれば、漢籍を受容して日本語化していく過程とも言えるわけで、そうした意味では、国書を押す勢力と伝統的に漢籍から選出すべきという勢力のバランスをとったといえるかも知れません。

そんなTwitter上で気になったものをいくつかとりあげると、まずは「令」の文字をどう書くかと言うのがあって、それにもちゃ~んと答えがありました。

令の書き方

ということで、どちらでも良いそうです。では読み方はといえば「れいわ」なのですが、「律令」からとって「りょうわ」と読ませる方法もあるとつぶやいたら「令月」(れいげつ)ですからねと即座に帰ってきました!さすが(^^;)さらに言えば「和」は「元和」などのように「な」という読み方もありますので、「れいな」もありかなと思うのですが、そうすると名前みたいですね。今年生まれた女の子に「令和」で「れいな」と読ませる子がいたりして…。で、二つあわせると「りょうな」というのもありですかね。でも結局、「れいわ」です!続いてローマ字表記ですが、これは明らかに「R」とのことです。

「令和」ローマ字表記

で、そうすると令和12年に生まれた子はR12、令和15年に生まれた子はR15、そして令和18年に生まれた子はR18になりますよね。ちょっとアダルトっぽいという話題で盛り上がってもいました。さしずめアダルトチルドレン。でも、平成も「H]だったじゃんとかいう意見もあって、そりゃそうだ!ただ、今年は元年だから「R1」!つまり明治がR1を大宣伝するんじゃないかとか…。

それから「令月」は2月の異称でもあるから、新天皇の誕生日を意識した?とかいったつぶやきもありましたね。でも、1番笑ったのは、この偽サイトでした。さすがエイプリルフール!即座にここまで作るそのセンスには感心しきりです。いずれにしてもこの新元号狂騒曲、しばらく続きそうですな(^_^;)

令和大学だって(笑)

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投稿者プロフィール

馬場 弘臣東海大学教育開発研究センター教授
専門は日本近世史および大学史・教育史。
くわしくは、サイトの「馬場研究室へようこそ」まで!
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