【閑話休題】花嫁の父

今日のつぶやき
【閑話休題】花嫁の父

怒濤の5月が過ぎて、何だかひと息です。まったくの私ごとで申し訳ございませんが、先々週の今日は、上の娘の結婚式でした。それにしても、最近の結婚式は様変わりですね。仲人を置かないのは当たり前になってしまいましたが、披露宴も主賓という概念はなくなっていて、パーティーと披露宴の中間みたいです。なので、友だちの挨拶はあっても、主賓の挨拶はありませんし、余興で歌を歌うことなどもありません。その代わり、ビデオ上映が花盛りです。式が終わると、すでにその1日の様子が編集されて上映されます。もっとも、私どもはお客様のお見送りになりますので、まだそのビデオは見ておりません(^^;)

それにしても娘たちが作成したビデオには泣かされました。娘は、高校1年生の時に、膵臓に腫瘍ができて、1か月病院に入院し、それから1か月療養が必要でしたから、2か月高校を休んでいます。入院している間も、2回開腹手術をしています。娘は小学校高学年の時から身体が不調で、結局、膠原病と診断されていました。腎臓も悪いと言うことで、検査入院したのですが、その際のエコー検査で膵臓に腫瘍が見つかりました。検査入院したその日に担当医からかかってきた言葉は今でも覚えています。「膵臓にマスが見えます」「マス?マスってなんですか?」。答えは腫瘍とのことでした。目の前が真っ暗になるというのはこういうことをいうのだと思いました。

腫瘍が悪性か良性かは開腹してみなければわからない。ただでさえ、膵臓の腫瘍などは発見しづらいのです。何時間手術にかかったでしょうか?終わってICUに運ばれてきた娘。その後の説明で、良性の腫瘍でいわゆる癌ではないと言われた時の安堵感。それでも当時は世界で100例しか発見されていない病気とのことでした。

一青窈さんに「ありが十々」という歌があります。一青窈さんは、早くに御両親を亡くされたとかで、そんな両親に、産んでもらったことに「ありがとう」という感謝の歌です。アルバムの曲ですからほとんどの人は知らないと思います。私は好きでiPodに入れて車で聞いていました。娘も聞いていたのですね。

そのイントロが流れてきた時にはもうそれだけで涙でした。そして、娘のビデオのメインは、入院、闘病していた頃の写真でした。浪人しながらも医療に拘わる仕事を目指したのも、この経験があったからでした。今は臨床工学技士として働いています。「毎日病院に見舞いに来てくれたこと、そのたいへんさは病院に勤めている今だからこそわかります」という文字を目にしたときは、頬は大洪水です。娘は覚えているかわかりませんが、1回目の手術が終わった後に妙にもぞもぞしていて、初めわからなかったのですが、手を握って欲しかったのですね。握った手の暖かさ。娘も安心したようで、しばらくすると眠ってしまいました。手術の前は強がっていましたが、本当は、本当に心細かったのでしょうね。

実は手術をした本学の病院で娘は働いています。そして、なんと、手術を担当してくださった先生も出席してくださいました。今年、定年されたばかりですが、娘とは交流があって、お誘いしたら、快諾してくださったとのこと。「手術を担当した患者さんの結婚式に呼ばれることが夢だった」との言葉をいただいたときには本当に感激でした。先生には、本当にどんなに感謝しても仕切れません。

結婚式場

こちらは式場の外にある教会で、薔薇の花が満開でした。このバージンロードを歩いて式を挙げたのですが、父は緊張しっぱなしで、躓きそうになりました。そこで、先生のお顔を見つけたとき、もうこみ上げてくるものを押さえるのに必死でした。どうにも泣き虫な花嫁の父でした(^^;)

投稿者プロフィール

馬場 弘臣

馬場 弘臣東海大学教育開発研究センター教授
専門は日本近世史および大学史・教育史。
くわしくは、サイトの「馬場研究室へようこそ」まで!

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