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新年の授業は災害史から…

本学ではいよいよ明後日、7日から冬休み明けの授業が始まります。と、思っていたら「緊急事態宣言」発令ですか…。去年の春に比べるとずいぶんと緩やかではありますが、さて、休みあけの授業はどうなるのでしょうか?たぶん、明日は職員の仕事始めですので、何等かの発表があるでしょうね。1月には共通テスト、2月には入学試験、そして私はウィンターセッション授業の史料管理学演習がありますし、それらはどうなっていくんでしょうか。

それにしてもどんな政策をとるにせよ、なぜ、去年の内に国会を延長しても議論しなかったのか?安倍内閣も菅内閣も危機管理という面では全くお粗末ですね。首相-官房長官の7年間の総括がそれか…と文句の一つもいいたくもなります。いや、そもそもこの国の政治が持っていた自民党的体質がもっとも悪い形で結晶したと言えるかも知れません。

さて、明後日の授業は現代教養科目の基礎教養科目「人文科学における歴史学」です。この授業では歴史学の学問としての特質、方法論、歴史的な考え方を順を追って話してきました。ある意味、史学概論的な者ですね。今回はこれらを具体的に研究に結びつける実例として私自身の研究の一つ災害史から「元禄大地震と宝永富士山噴火」というテーマでお話をし、レポートを書いてもらおうと思っています。

今の新型コロナウイルスもこれまでもくり返されてきた災害の一つとして考えて行く必要があるかと思います。流行病のパンデミックは歴史的にくり返されてきましたから。最近は「生物災害」という語で表現されているようです。

せっかくですから、スライドを4枚ばかり紹介します。

こちらはタイトルの次のスライドです。災害史がさかんになったのは、2011年の東日本大震災からでした。それからもう今年は10年経つのですね。これが話のきっかけです。それから地震・火山噴火・台風(風水害)に先ほど言いました生物災害を含めて主な災害を書き上げてみるとこれだけあります。本当に「災害列島」という言葉がぴったりです。

あ、私が災害史に興味を持ったのは、1980年代に南足柄市史編纂に参加してからです。その成果の一部は、本サイトの「馬場研究室へようこそ」からダウンドーロできますので、興味のある方は是非!下記をクリックしてみてください。

こちらは2枚目のスライドです。歴史学の研究にはいろんな興味からは入りますが、最近、卒論でも災害史に興味をもつ学生が多いのも1枚目のスライドにありますように、災害の頻発という現在の問題意識から興味をもつことが多いですね。その課題は、歴史的に起こった災害を分析することによって、防災あるいは減災といったことに役に立つのではないかということですね。東京大学の地震研究所はそうした意味で古文書・文献研究を続けていて、それは『新収日本地震史料』などに結実しています。

減災は最近出てきた概念で、災害を完全に防ぐことはできないとしても少しでも被害が小さくできないか、その方法を考えて行こうというものです。

そこで宇佐美龍夫先生編の『日本被害地震総覧 599-1995』(東京大学出版会、1996年)から江戸時代の地震、火山噴火、洪水、風水害、飢饉について統計を取ったものです。開幕から廃藩置県までを対象としています。また、江戸時代ですから、ここでは北海道地方と沖縄地方は除いています。それでも383件あります。もっとも多いのは地震で、252件ですが、これは関東に集中しているのが特徴です。

と、書き始めたらキリがありませんので…。ただ、この統計を取った段階では、生物災害については眼中になかったですね。

3枚目のスライドでは先の統計を元に「歴史災害」という概念について説明しています。「歴史災害」については、北原糸子先生編の『日本歴史災害事典』(吉川弘文館、2012年)で北原先生自身が説明されています。これを書き抜いただけですが、これを「文明」の問題として考えようというのが私の提起です。

4枚目はこれから歴史学として災害を分析するにあたって必要となる素材を書き上げたものです。もちろん第1は古文書などの文献資料-文字資料ですね。同じ文字資料でも例えば年貢の変遷などはデータとしてグラフ化した方がわかりやすいので、データ資料として別にしてます。さらに富士山噴火については多数の図像資料が残っていますから、これも活用しましょう。もちろん、被害の後な現地を見ることも重要です。これらを私は「歴史素材(Historical Material)」と呼んでいます。とくに火山の噴火や地震などの災害は考古学の成果はもとより、地質学や火山学、地震学などの自然科学との共同研究も必要になりますと言ったことも話をするつもりです。

それでは、具体的にこれらの歴史素材(Historical Material)を使ってお話ししましょう!と、もうこれは講演調になりますね(^^;)

受講生がいましたら、どうぞお楽しみに(^^)/

投稿者プロフィール

馬場 弘臣東海大学教育開発研究センター教授
専門は日本近世史および大学史・教育史。
くわしくは、サイトの「馬場研究室へようこそ」まで!
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