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遠隔授業と対面授業

昨日は、私の本務部署である教育開発研究センターの第5回教育開発フォーラムでした。題して「Withコロナ・Afterコロナ時代の授業設計」です。本当にベタですが、私が提案したタイトルでして(^^;)新学期を目前にして、さてどのように授業を展開するかと。その意味で言えば、開催は少し遅すぎますけれどね。

文部科学省の方針で、2021年度は対面授業を50%以上にするようにという通達が出たために、それまで大人数の講義は遠隔授業で、少人数は対面で、とだいたい棲み分けていたのが、とくに大人数の講義型授業に対面を取り入れるということで、結構、てんやわんやしています。

ひと口に遠隔授業と言っても、リアルタイムで行なうオンライン授業と、撮りだめしたビデオを好きな時間に視聴するというオンデマンド授業に分けられます。もちろん、リアルタイム授業を録画してオンデマンドとすることも可能です。本年度の日本史情報処理の授業では、それも取り入れてみました。

いずれにしても当面の趨勢は、遠隔授業と対面授業を併用しようとすることが求められていて、これをハイブリッド型授業と言います。何だか自動車のようですね(^^;)ハイブリッド型授業もそのやり方によって、大きくブレンド型授業、ハイフレックス型授業、分散型授業に分けられます。

ブレンド型授業は、授業の目的によって遠隔授業の日と対面授業の日を分けるも方法で、当然のことながら、対面の日は一応、全員が出席するわけですから、感染対策の強化が必要になります。

ハイフレックス型授業は、リアルタイム遠隔授業と対面授業を選べる、もしくは半々ずつ分けるという方法です。つまり教室で対面授業をやりながら、リアルタイムで配信するということになります。場合によっては、それをオンデマンドにして後から視聴してもよいと。でも、そうなると出席とかが面倒ですね。

分散型授業は、まず履修生をグループに分けて、全体的な流れや必要な知識は先に遠隔授業で行ない(これはリアルタイムでもオンデマンドでもよい)、その後グループ分けした一方は遠隔授業、もう一方は対面授業に分けて、それを交互にやるという方法になります。主に実験・実習には効果的だと言われています。

まぁ~私の場合、卒論のゼミと日本近世史基礎演習は少人数ですから対面授業ですが、現代教養授業は、1年生用の基礎教養科目と、全学年に解放されている文理共通科目の2つのパターンがあります。基礎教養科目は2人で半期を受け持ちますから、実質的にクォーター制になるというのは何度かお話ししました。本学は1コマ100分授業で半期14回コマですから、基礎教養科目(人文学における歴史学)は7回で後退というわけです。だいたい1クラスは70名前後ですね。文理共通科目(江戸学と現代社会)は普通に100名は超えます。まぁ~300名も400名も抱えていらっしゃる先生に比べれば可愛いものですが…。

で、現代教養を併用しようとすると、全員出席は教室のキャパからして無理ですから、ブレンド型は無理、分散型も実質的には無理…!ということになれば、ハイフレックス型をめざすことになるのですが、それもどのような方法を取るのか、遠隔にもリアルタイムとオンデマンドがあり、対面は少なくとも半分ずつにしなければならない、というところで、本センターの先生方はこうした遠隔授業の違いの概要について説明された後、実際にハイフレックスの実習について発表されたのでした。

こちらはハイフレックスの準備状況です。ミドリの幕は「クロマキー」といって、背景に好きな画像や映像を映し出すためのものです。私であれば、江戸時代の浮世絵をバックにしてそれを切り替えたりして…!ただし、これはミドリの服を着ると体が消えてしまいますから要注意です(^^;)

ハイフレックスで対面をやりながら、リアルタイムで授業をやるとなると装置も大変です。テーブルの真ん中にあるのは自動追尾型のWebカメラで、真ん中の先生が持っていらっしゃる棒状で頭が丸くなっているのは、広角カメラです。つまり一方で広角カメラを使って教室全体を写す。自動追尾型カメラは人の動きに反応しますから、板書しても壇上を移動しても教員の姿を撮ってくれる。これをオンラインで配信しようというものです。

せっかくですから、自動追尾型カメラの動きについてご覧になりたい方は、以下のIRLをクリックしてください。

https://drive.google.com/file/d/17rzB1RBb8Jg04H0rMoe5o8mWT6MmzxAU/view?usp=sharing

報告では、4代のiPadを駆使してZoomのブレークアウトセッションの各グループを同時に見られるようにしたり、「Spatiaih chat」というグループワークソフトを紹介してくださったりと、いろいろと工夫されていることが分かります。

興味深かったのは、皆さん、オンライン授業に一様に否定的ではなくて、これからの授業形態として新たに取り入れようとされいることでした。「よい授業の根幹は変わらない」というご意見も印象的でした。

ただ、ここで紹介したハイフレックス型授業は、というよりハイクレックス型授業そのものは教員がひとりで背負うのには荷が重すぎますね。TA(Teaching Assist)などにサポートしてもらわないと、トラブったら大変です。また、いずれにしてもWi-Fi環境が整っていないと絵に描いた餅になってしまいますね。

結局、対面が1コマあれば学生は大学に出て来なければなりませんから、その次の授業がリアルタイムオンライン授業だったら、それを受講する教室も確保しなければなりません。そこでWi-Fiが弱かったら…。

対面と遠隔を組み合わせる…いうほど容易くはなさそうです。私は講義型授業はオンデマンドを主にして、一部対面を取り入れる(恐らく半分ずつ教室に入れる)といったところで春学期は落ち着きそうです。

投稿者プロフィール

馬場 弘臣東海大学教育開発研究センター教授
専門は日本近世史および大学史・教育史。
くわしくは、サイトの「馬場研究室へようこそ」まで!
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