新型コロナウイルス感染症が落ち着きをみてている…ということ以上に、コロナに対する恐怖心みたいなものがずいぶんとやわらいだことが大きいようですね。大学の授業も半分が過ぎたところで、対面の授業も何だか当たり前のこととなっています。もっとも私の場合、春学期は多くても33名ですから、それほど大教室が必要なわけではありません。すべてが演習科目の対面授業です。文科省では面接授業という語で統一するということですが、面接では現在真っ盛りの就活を思い出してしまって仕方がありません。
本日は、2時限目が日本近世史基礎演習、4時限目が卒業論文基礎2でどちらも演習科目になります。どちらもここのところ全員が揃いません(^^;)とくに卒業論文基礎2は、今が就活の盛りで面接が入っている学生が多いのです。早く内定が出てくれるといいのですが…。今年は内定率が高いとはいうものの、やはり文系は苦戦しているのでしょうか?
2時限目の基礎演習は本来ならば学生に発表してもらう授業なのです。ただ、グループで議論しながらレジュメを作成する、発表する、議論するというのがなかなか難しい時代になりました。ましてや授業を取っている3年生は、新型コロナウイルス感染症の影響で1年生の時はほぼ遠隔授業、2年生で対面が始まったものの、遠隔がまだまだ多かった学年です。
グループ発表というと近年は指示した史料を区切ってバラバラに読んでレジュメを作るようなことが当たり前になってきました。協同してやるということがなかなか難しいですね。では個人ごとにと思っても、その方法がよくわかっていないこともまた問題でした。それは入門ゼミナールを担当していてもわかります。
ですから、今回は各人がしっかりとしたレジュメを作成できるようになることを目標にやっていこうと思っています。史料は昨年刊行した『増補改訂版 幕末風聞集』の中から、ペリーが来航した際の浦賀に関する史料をピックアップして読ませています。今回は浦賀奉行がアメリカ大統領フィルモアの国書を受け取っていいのかどうかということについて、ペリーとのやり取りを報告しながら幕府に対応を尋ねた史料でした。
授業では史料集の形で配布しています。これは予習用で、実際の授業では1つの史料をまずA4に打ち出して返り点を打つことからはじめます。さらに書き下しを原稿に書いてもらいながら、残りは宿題にします。
こちらは書き下し文のサンプルで、宿題として提出された原稿用紙は私がアカを入れて置きます。さらにこの書き下し文は、A3に印刷して、その隣に現代語訳をやってもらいます。赤文字や赤線で囲った部分、アンダーラインを引いた部分は、史料を読む上で重要なカ所を指摘したものです。これは注として調べたり、とくにどういう意味かを調べてもらうためにつけています。なお、返り点を打ってもらう釈文は読点だけですが、書き下し文には句点も入れてもらうようにしています。江戸時代の史料はとにかく1文がダラダラと長いので、区切りを確認してもらうためです。
タイトルにあるように現代語に訳したものです。これも私が訳したサンプルです。現代語に訳していく上で、赤い文字の部分、赤い線で囲った部分そしてアンダーラインの部分をどうやって調べるか、またどのように解釈するのかが問題です。本来なら意訳で十分なんですよね。今回は入門ゼミナールで使っているコーネル・メソッドノートを使って、要点をまとめてもらいました。
釈文、書き下し文、現代語訳は、それぞれ配布するとともにプロジェクターで投影して説明していきます。プロジェクターはこの教室には設置してありません。大学の備品を借りることもできますが、使い勝手が悪いので、自前です!
ただ、ご覧のように後の方からはほとんど見えませんので、手もとの史料と合わせて見てもらうようにしています。浦賀奉行戸田氏栄(うじひで)の伺書をどのように読んでいくか…。例えば中には「組みのもの」が交渉にあたったことになっていますが、それはどういうことか、また、御国法とあるのは当然、鎖国のことを言いますが、その際に通信のない国からは例え国王からの来翰であっても受け取らないと戸田は伝えます。では、この国王とは具体的に誰をいうのか?など、ただ読んだだけはわからないことばかりなのです。時代背景や歴史用語などいろんな知識がないと史料は読めません。というか解読もしくは分析することはできません。
今はそうした史料の奥深さ、難しさ、だからこそのおもしろさを知って欲しいという段階です。牛の歩みではありますが、コロナで遅れている分、ここで歴史学と史料のあり方について興味を持って欲しいと切に願っているのでした。それにしても後、授業も6回しかありません。もう少し急いだ方がいいかな…(^^;)
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