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我が家の花戦さ

いつの間にか庭のカンパニュラが満開になっていました。カンパニュラと言えば、思い出すのは、名優の故緒形拳さんのことですね。遺作となったドラマ「風のガーデン」のメインテーマが「カンパニュラ」で、平原綾香さんが「カンパニュラの恋」を歌っていらっしゃいましたね。リニューアル前のblogでも「カンパニュラに恋して」(http://www.ihmlab.net/wp/?p=357)と題して、書いています。2011年5月31日のことでした。甲状腺眼症のステロイド治療のために、東海大学医学部付属病院に3週間入院して、ちょうど退院した頃のことでしたね。もう6年か…。

 

我が家の庭では外にも、ジキタリスやガウラなどが咲き誇っています。我が庭の花戦さです。さしずめ、カンパニュラがホラ貝で、ジキタリスの長いのが鑓ですかね。来たる6月3日(土)から、東映作、野村萬斎主演の「花戦さ」がいよいよ始まります。この映画にはちょっと期待していますので、ぜひ観に行きたいと思っています。歴史家の磯田道史さんも、戦闘ばかりの戦国時代で「人を生かす」人物としての萬斎「池坊専好」について期待の気持ちを語っていらっしゃいます(https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170525-00000002-wordleaf-movi&p=1)

ただ、ひとこと言わせていただければ、池坊2代目専好は、生花の「改革」を行なった人で、それまで花瓶に対して1倍か1倍半に生けていた花を、2倍半から3倍半と華麗に大きく生けることを編みただしたのでした。生花そのものは、鎌倉時代の終わりから南北朝時代にかけての動乱期に、茶の湯が闘茶として流行ったように、新たな武家の好みとして広まります。そして戦国時代に、千利休が村田珠光から武野紹鴎へと受け継がれた「侘茶」を大成させたように、専好によって編み出された新たな方法によって、それまで「たてはな」と呼ばれていたものが「立花(りっか)」と称するようになったと言われています。茶室の添え物であった生花が、それだけで鑑賞の対象になったということです。それにしても、日本の伝統文化と呼ばれるものは、戦乱の時代にこそ生まれて発展していく。その不思議さは何なのでしょうね。

こうした専好の立花は、秀吉の天下統一から家康の世にかけて、武家や公家や上級の町人たちが立場を超えて多様に混じり合った、いわば「サロン」的な文化とともに大きく発展していきます。利休をはじめとする茶の湯については、これまでも映画やドラマの主役として、あるいは重要な要素として描かれ続けてきましたが、専好が、立花が主役として映画で描かれていくということは、だからそれ自体が画期的で、歴史的なことだと思います。その中の人と人との物語だけではなく、そうした「歴史的背景」をこそ、まずは皆さんには知っていただきたいですね。

投稿者プロフィール

馬場 弘臣東海大学教育開発研究センター教授
専門は日本近世史および大学史・教育史。
くわしくは、サイトの「馬場研究室へようこそ」まで!
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