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江戸幕府のしくみと役職

昨日は、今年最初の授業、卒業論文基礎1の授業でした。終わって、兼平賢治先生の研究室で第4回日本史研究会の研究報告会です。今回は修士1年の渡邉奨太君が、修論のテーマとしている伊豆国韮山代官江川英龍の海防政策について報告してもらいました。私も横須賀市史で海防を担当していましたし、江川文庫の調査も担当していましたので、興味津々です。まだ、活字の史料を網羅して検討している段階ですので、皆さんの意見を取り入れて頑張ってほしいものです。

研究会の後は、報告お疲れさま会&新年会&神谷大介氏『幕末の海軍』出版お祝い会でした。いつもの剣友楽で。

さて、前回は、藩の組織と役職について図解してみました。もちろん、この図は最大公約数的な概念図でした。そこで今度は、幕府の組織と役職について図解してみましょう。

この図は、竹内誠監修・ 市川寛明編集一目でわかる江戸時代―地図・グラフ・図解でみる(小学館 2004年)104ページにある「幕府の組織」をもとに、これをPowerPointで表示するために書き直して見たものです。この図解本は、刊行されてからすでに10年以上が経っていますが、大型本で図表もよくできていて見やすいです。ここでは、スライド1枚に表示させるためにかなり修正していますが、基本的な表示形式は継承できるようにしています。

幕府の組織が表と奥に別れているのは藩の組織と一緒ですが、奥が「中奥」と「大奥」に別れていることが特徴だと言えるでしょう。中奥と大奥を合体させれば、実は藩の組織とそう大きな違いがあるとは思いませんが、幕府の場合は「中奥」を充実させることで、藩の組織よりも表の機構と将軍(藩主)を繋ぐ部分が厚くなっていると言えそうです。とくに側用人や御側御用取次は、将軍親政を行う上で重要な役割を果たしたことは言うもでもありません。

表の組織は、老中と若年寄を中心とした政権の中枢を譜代大名が勤め、実務を旗本や御家人たちが進めていくことになります。譜代大名でこれらの役職を決める家柄はほぼ固定化しています。また、青い四角で表した「諸大夫(しょだいぶ)」は、五位の官位を持つ旗本です。諸大夫は、旗本の中でも位が高いわけです。したがって黒い四角は、それ以下の旗本もしくは御家人ということになります。

この図は、そうした家格と役職を考慮した上で書かれていますが、やや並列的な形式であることは否めないかと思います。番方にしても、泰平の時代が長く続いたために、閑職となったとされ、図の中でも並列されています。そこでもう少し、組織や機構の内容がわかりやすいように書き替えてみたのが次の図です。ここでは大奥は省いています。

表は、大老・老中・若年寄と寺社奉行・奏者番そして京都所司代・大坂城代の三つのグループに分けてみました。それぞれの役割が違うからです。寺社奉行は奏者番と兼任することが普通ですし、町奉行・勘定奉行とともに「評定所」の軸を形成し、重要な裁判や政策・立法の評議にあたっています。ここが実務官僚につながっていくことになります。実務官僚も藩の図にあわせて庶務・監察と政務・行財政を担当する役方と、軍事を担当する番方をきちんと分けるようにしてみました。

また、京都所司代と大坂城代は幕閣に連なっていたも現地に赴任しますし、その点は遠国奉行と同様ですので、近い場所に配置してみました。藩でも飛び地領のある藩は多いですからね。藩の図ではその点は省略してしまいました。そこでこんな感じになりました。

こうしてみますと、寺社奉行・奏者番兼任→大坂城代→京都所司代は、老中への出世コースと言われますが、そもそもが老中以外の譜代大名役は、若年寄を除けばほぼこの4つの役職しかありません。そこで寺社奉行・奏者番で実務の経験を積ませ、大坂と京都という江戸以外の二大都市で経済の経験と、朝廷との交渉を体験させた上で老中に就任するというのは、よくできたシステムだなぁと思いますね。

当たり前のことですが、幕府の組織と役職は時代によっても変わりますし、とくに幕末期の変化は大きいですから、また機会があれば図解してみたいと思います。

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投稿者プロフィール

馬場 弘臣東海大学教育開発研究センター教授
専門は日本近世史および大学史・教育史。
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