何が学びを妨げるか その4 大学進学率を考える

今日のつぶやき
何が学びを妨げるか その4 大学進学率を考える

さらに続編です。今度は大学への進学率という側面から見ていきましょう。ここからは文部科学省のデータです。次の図は、大学への進学率を示したものです。ただし、緑色の折れ線が男子で、赤色の折れ線が女子、紺色の折れ線が平均となっています。

進学率が大きく伸びるのは、1966年から1974年にかけての時期ですね。第1次ベビーブームの真ん中から始まっています。1966年は平均11.8%(男子18.7%、女子4.5%)だったものが、1975年には27.2%(男子41.0%、女子12.7%)まで伸びています。この時期はまた、第2次高度経済成長の時期にあたります。

高度経済成長は、1955年前後から1061・62年頃にかけてを第1次とし、64年・65年に一度不況を経験した後、66年から73年のオイルショックまでを第2次として区分しています。この進学率の伸びは、第2次からオイルショック後の75年まで続いていることに留意しておく必要があるでしょう。いずれにしても、経済成長と18歳人口の増加の波に乗って急激に大学進学率が伸びたことがわかります。社会もまた、高等教育を受けた人材を必要としていたし、それができる経済背景も整ってきたと言えるでしょう。とくに男子の伸びが大きいのは、まだ男女の格差があったこともありますが、それだけ中堅技術者や管理者などを必要としていたからでしょう。

しかしながら、1975年にピークを迎えた進学率はその後は停滞もしくは微減に転じていきます。1975年の27.2%であったものが、1990年の24.4%に下がっています。とくに男子は41.0%から33.4%まで下がっています。女子は12.2%から12.6%程度の間でほぼ横ばい状態なのですが、1968年、つまりゴールデンセブンの最初の年から、急激に伸びていっているのがわかります。

先にみたように、18歳人口は、第1次ベビーブーム以後は急激に下がって、1975年から10年ほどはだいたい156万人から158万人程度で推移します。私が大学に進学したのはこの頃だったのですが、依然として大学は狭き門でした。需要に供給が追いついて行かなかったのは確かでしょう。その後、第2次ベビーブームを迎えるわけですが、その中ごろの1990年からまた上昇に転じている点がおもしろいです。これは1985年から始まったバブル経済の後半期にあたります。そう考えれば高度経済成長-第1次ベビーブームの時期と似たような状況を示しているといえるかも知れません。ただ、それ以前から女子の進学率が伸びたというのは、そもそも産業構造が変わっていったからとも言えるでしょう。すなわち、第3次産業、とくにサービス業の拡大です。

ところが、ゴールデンセブンが終わった後、つもりもっとも厳しい受験戦争の時期を超えると、それから18歳人口が大きく下降していくのに対比するように、進学率は急激に伸びていきます。バブル崩壊後の1992年が平均26.4%(男子35.2%、女子17.3%)だったものが、2009年にはついに50%を超えています(平均50.2%、男子55.9%、女子44.2%)。男子だけに限れば2005年には50%超えです。そして。昨年、2017年のデーターでは平均52.6%、男子55.9%、女子49.1%となっています。この間、女子の進学率が伸びて男女の格差が縮まっていることも特筆すべきことでしょう。さらにおもしろいデータがあります。

こちらは1984年からのデーターしか残っていないのですが、現役の進学率は女子の方が一貫して高いのですね。ただ、1990年代は女子の方が断然高かったものの、現在は両者の差は縮まっているようです。で、2017年のデーターをみますと、女子が57.4%、男子が52.2%で平均が4.8%となっています。さらにもう一つ興味深いデータを!

こちらは短期大学の進学率を示したものです。何より女子の進学率が1962年の4.1%から1975年の20.2%まで急激に伸びているのが注目されます。男子は一貫して2.0%前後ですね。それでも2008年頃から下降気味です。そして女子はというと、1970年代から横ばいで80年代の中頃から90年代の中頃にかけて上昇するのですが、1994年の24.9%を頂点として、以後、急激に下降します。2017年のデーターは女子が8.6%、男子が1.0%で、平均が4.7%となっています。短期大学進学率の低下は、4年制大学への改編と女子の4年制大学への進学の上昇と対応することになるのです。

いずれにしても、バブル崩壊後、そして1991年の大学設置基準の大綱化以降の進学率の上昇は、社会や経済の動きと連動したのではなく、より作為的なものであったことといえるでしょう。

投稿者プロフィール

馬場 弘臣

馬場 弘臣東海大学教育開発研究センター教授
専門は日本近世史および大学史・教育史。
くわしくは、サイトの「馬場研究室へようこそ」まで!

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