【史料学10】年代表記と年代コード(基礎編)


改めて言うまでもありませんが、歴史学の基本は、物事を時系列にみていくことです。年表を作ることはその最たるもので、もっとも基本的な作業になります。【史料学09】では、史料目録のデータをラベルシールにして史料保存用の封筒に貼付するという方法について紹介しました。史料目録はこれまた歴史学の基本となるデータベースの一つです。考えてみれば、歴史学という学問は、各人が集積した史料やデータを分析するところから始まりますから、自分の研究に応じた「データベース」づくりがすべてと言っても過言ではないでしょう。そのデータベースを並び替えてみたり、検索したり、抽出したり…。PCを使ったデータベースは何より、このようにデータを自在にsort(並び替え)、search(検索)、extraction(抽出)できてこそ、その最大のメリットを発揮できるわけです。そのために何より重要なことは、データの均質性と斉一性なのです。その話はまたいずれということで、ここでは年代順に並び替える(sort)方法について考えてみましょう。おそらく、いろんな方がいろんな方法を考えて実行に移していらっしゃると思うのですが、あくまでもこれは私の方法論です。ただし、基本となるのはもう20年ほど前になるでしょうか?今は東洋大学にいらっしゃる白川部達夫氏に教えていただいたものです。当時は確か、早稲田大学方式だというように伺ったと記憶しています。それを改良して現在の年代コード方式があるのですが、まずは、基本となる考え方からみていきましょう。

◎年代表記の考え方

歴史学の年代表記の基準は和暦です。だって古文書には和暦しか書いてないでしょ。ということも重要なのですが、何より太陰太陽暦を使った和暦と太陽暦を基本とする西暦では同じ日付でも実際にはひと月ほどのズレがありますよね。でも、それより重要なのは改元の問題です。例えば慶応元年は4月7日に改元していますので、史料に慶応元年(1865)としかなかったとしてもそれは4月7日以降のことだとわかりますし、逆に元治2年と書いてあれば4月7日より前ということになります。つまり時期の推定が可能になるのです。また、慶応元年には閏月があって5月の後に閏5月が来ます。これも表現したいですね。とすると、史料目録や年表ではまず年代順に並び替えたいのですが、ここでいう年代順=編年は和暦を用いたもので、しかも以下のような順番に並び替えたいわけです。

(1)年号・月・日までがわかっているもの。

(2)年号・月までわかっているもの。

(3)年号だけしかわからないのもの。

(4)年月日不明のもの。

さらに

・閏月は通常月の後にくるようにする。

・改元の年は、改元前の年号と改元後の年号が混在しないようにする。

これ以外にも十干十二支がわかるもの、十二支だけのもの(十干だけのものというのは基本的にありません)、月日だけわかるもの、月だけわかるもの、日だけわかるものといったものもありますし、これは明らかに江戸時代のものだ!ということも明らかならば並び替えの対象にしたいものです。これも年代コードを使えばそれも可能なのですが、それも後ほどにして、ここではまずは上記のルールに従った並び替えについて見ていきましょう。慶応元年の例を取ります。例えば、次のような順番に並び替えたいのです。

(1)元治2年2月2日

(2)元治2年2月

(3)元治2年4月6日

(4)元治2年4月

(5)元治2年

(6)慶応元年4月

(7)慶応元年5月5日

(8)慶応元年5月

(9)慶応元年閏5月5日

(10)慶応元年閏5月

(11)慶応元年

・慶応2年5月5日

・慶応2年5月

・慶応2年

当たり前ですが、このように並び替えるためには、それぞれに独自の数値をつけてやればよいのです。これには西暦を基本にした年代コードという考え方を採ります。

◎年代コードの考え方

さて、そこで年代コードの付け方についてですが、これには11桁の数値を用います。年号コード5桁、月コード3桁、日コード3桁で最終的にこれを合体します。それぞれのコードは以下のような規則に従っています。

年号コード(5桁)…西暦(4桁、ただし、10世紀未満で年号が1〜3桁の場合、頭にその分「0」を加える)+月以下の記載があれば「0」とし、月以下の記載がなければ「1」とする。改元で新しい元号の場合は、月以下の記載があれば、「5」とし、月以下の記載がなければ「6」とする。

月コード(3桁)…月(3桁、ただし、月が1桁の場合、頭に「0」を加える)+日以下の記載があれば「0」とし、月以下の記載がなければ「1」とする。閏月の場合、日以下の記載があれば「5」とし、日以下の記載がなければ「6」とする。年号だけで終われば、ここは000とする。

日コード(3桁)…日(2桁、日が1桁の場合、頭に「0」を加える)+「0」とする。年号または月だけで終われば、ここは000とする。

●年月日が不明の場合は、5000000000とする。

おわかりでしょうか?西暦、月の後に1桁分数値を入れ、その数値を変えることで先の法則による並び替えを可能にするわけです。つまり

○○○○0(または1,5,6)+○○0(または1,5,6)+○○0

0の部分を操作することで並び替えを調節するのです。年号コードの部分については、西暦の後が5から6であれば、0(これは月以下がある場合)より大きな数値になりますよね。月コードも同じです。論より証拠、先の年号に当てはめてみましょう!

(1)元治2年2月2日  →18650020020

(2)元治2年2月    →18650021000

(3)元治2年4月6日  →1865004060

(4)元治2年4月              →18650041000

(5)元治2年                    →10651000000

(6)慶応元年4月            →18655041000

(7)慶応元年5月5日      →18655050050

(8)慶応元年5月            →18655051000

(9)慶応元年閏5月5日  →18655055050

(10)慶応元年閏5月      →18655056000

(11)慶応元年                →18656000000

・慶応2年5月5日        →18660050050

・慶応2年5月              →18660051000

・慶応2年                    →18661000000

これには十干十二支や推測の場合など、あといくつか問題があります。何よりこうやって数値を考えながら入力すると、人間のやることですから必ず間違いが出ます。さらにせっかくコンピュータを使うわけですから、もう少し効率化できないのか?

ということで、続きます(^^)/

 

馬場弘臣 のプロフィール写真
カテゴリー: 史料学研究 パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

*