時代考証学会第2回サロンが開催されました。


水戸に行ったときのblogで、春よ、来い。早く、来い。駆け足でやって来い。と書きました。ようやく春も訪れたようなのですが、ここのところ花粉がすごくて、何でも去年の7倍とかだそうで、いや〜花粉症の皆さまには悪いことを言ったなと思っております(^_^;)うちの家族も私以外はみんな目がしばしばに鼻水、くしゃみがヒンヒンの状態です。私自身は確かにちょっと目鼻が変な感じですが、別に大丈夫で、さすがに百姓の小倅と自分で感心しております。

さて、既報の通りに9日の土曜日に東海大学で時代考証学会第2回サロン「東海大学北條秀司文庫から考える、脚本アーカイブズの可能性」が開催されました。残念ながら、会長の大石学先生は所用でいらっしゃいませんでしたが、でも、事務局の方々が熱心に議論をして下さって、私自身とても勉強になりました。これも既報の通り、私は「劇作家北條秀司の作品群と資料群―アーカイブズの視点から―」と題して、北條先生の作品群の紹介と、資料整理の実態、そして資料の特徴について1時間ほど話をさせてもらいました。何せ1937(昭和12)年にデビューして、1996(平成8)年に93歳で亡くなるまでの間に創作した戯曲の数が220編余、上演回数は2012年度末で860回近くを数えるというのだから、その量だけでも筆舌に尽くしがたいものです。ここではその歩みそのものが近現代の演劇史そのものなのだということを力説させていただきました。そしてそうした自身の足跡を示す資料を大量に残していること、それだけでも稀有な存在です。演劇関係の資料というのは、作家でも演出家でも俳優でもなかなか残らないのではないでしょうか。だからこそ、北條資料はまさに「資料群」としての価値があるのです。まして演劇は、映画やテレビと違って映像として残っているもの自体が少ないですからね。何より演劇は1回1回の公演が一発勝負ですし、カット割りとかできるわけではありませんから、舞台の隅々まで神経が行き届いていかなければなりません。それだけに演出家の役割も大きいのです。北條先生が自作自演にこだわったのも、やはり演劇ならではのことであることを再認識させられました。

また、サロンでは、近年の脚本アーカイブズ構築の動向について工藤航平さんから詳しい報告がありました。その際に、テレビの脚本では、準備稿から始まって完成稿に至るまでの段階と、実際に放映されたものを書き残すということで、再読稿という脚本があること、それらの総体はだいだい5段階にわたるという話を伺いました。工藤さんはもちろん、事務局の三野行徳さんなども、その再読稿や実際に上映された作品だけを残すのではなく、それぞれの段階の脚本を残していくことに意義があるというお話しをされていたのが印象的というか、目から鱗でした。何はともあれ、脚本アーカイブズのような形でも「残していく試み」は大事なことだと思います。ただ、本来の意味からすればアーカイブズは「群」なのですから、北條秀司資料をまさしく「群」として提示していければと思っています。サンプル的であっても、一人の劇作家にこれだけの資料が残るということ、逆に言えば、演劇というものが作り上げられるためにどれだけの「資料」が作成されていくのかということを典型的なものとして提示できればと思っています。そのためには何とか資金を調達しなけばなりませんね(^_^;)

他にも本当に勉強になったことがたくさんあって、有意義な一日でした。後1点だけ。東海大学の付属図書館が北條資料をなぜ受け入れたのかという質問に対して、図書館の村山重治さんから、もちろん、劇作家として貴重な資料であるということも重要であったけれど、メインキャンパスである湘南校舎は神奈川県にあるのだから、図書館としては積極的に県内の資料、地域の資料を集めていこうという意図があるのだというお話しを伺いました。恥ずかしながら、こういうお話しをきちんと伺ったのは初めてでして、私自身が感銘を受けました。本当にありがたいことです。

中央図書館といっても、4号館の書庫はちょっと狭いので、当日は会場の後ろの方を使ってちょっとしたミニ展示を企画しました。原稿から台本、ポスター、チラシ、プログラムはもちろん、取材や構想など作品の作成過程が比較的よく残っている、緒形拳さん主演の(1)「信濃の一茶」に関する資料をメインに、(2)台本、(3)原稿、(4)書画、(5)書簡、(6)写真アルバム、(7)劇場別のプログラム、(8)演劇関係の雑誌、それにポスターや舞台写真、絵看板などを展示してみました。お手伝いいただいた図書館の皆さん、ありがとうございました。せっかくですから、これまたちょっと紹介しておきます。

ついでながら、当日の私のレジュメとこのミニ展示の目録もアップしておきます。目録には原稿やポスターは入っておりませんが、興味のある方はダウンロードしていただければと思います。

北條秀司の作品群と資料群レジュメ

北條秀司文庫展示物目録

馬場弘臣 のプロフィール写真
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