【徒然】最期の時と歴史家…


ちょっと大げさなタイトルですねf^_^;) 目の治療で入院したわけですから、それほどのことでもないのですけれども…。退屈しのぎに撮りためて置いたDVDをいくつかipad2に入れて持って来てまして、その中の一つにカナダとフランスの合作映画で、「みなさん、さようなら」(2004年公開)というのがあって、ちょっとそれが面白かったので、その話題です。内容についての詳細はWEBで見ていただければと思います。

概略をちょっとだけ。カナダの大学で歴史学を教える大学教授のレミは、ワインと女性をこよなく愛する享楽的社会主義者を自称している。そのレミが末期がんにかかって入院するのだが、元来社会主義者を自認するレミは高価な私立病院を拒否して、廊下にさえベッドのある公立病院に入院。見かねた妻は、もっといい環境を与えたいと思って息子のセバスチャンに連絡するのだが、この息子は証券デーラーとして大成功を収めたやり手で、レミとはそりが合わず、長い間対立したままだった。それでもセバスチャンは、レミにいい最期を迎えさせようとして、裏金を使って、空室になっていた大きなフロア1室をキッチン付きの立派な病室に変えさせるわ、そこに世界中からレミの友人たちを呼び寄せて、病室はさながら同窓会。さらに痛みを和らげるためにヘロインを裏ルートで手に入れて与えたり、最期は友人が所有する湖畔の別荘でみんなに看取られながら、安楽死する。もちろん、息子セバスチャンとの長年にわたる確執も溶けて和解して…といったストーリーです。

こうやって書くと何だかし放題で幸せに死んでいっただけでのようで、実際、ぴあ映画生活でもYAHOO!映画でもgoo映画でもあまり評価は高くないようです(^_^;) 2003年アカデミー賞外国語映画賞、同年カンヌ映画祭最優秀脚本賞をはじめ数々の賞を受賞しているのですがね。思うに、こういったシチュエーションは、日本人の感性には合わないのでしょう。まずは「享楽的社会主義者」というのが理解できない(^^;)その女性遍歴や下ネタもどうも日本人好みではない。そもそも戦わずして快楽的に死んでいくこうしたあり方が今一つ理解できない。やはり滝田洋二郎監督の「おくりびと」や伊丹十三監督の「お葬式」のような映画の方が感性に合っているのでしょう。ただ、入院してわかるのですが、少なくとも快適に入院して幸せに死んでいきたいと思ったら、ある程度金がかかるのも事実。前回の入院の時は個室でしたが、今は大部屋で、環境も全然違います。そこら辺で死を変に美化しないで、さらっと描いているのはさすがです。死へのあり方は多様なのだと、それは国によっても考え方によってもいろいろなのだと達観して観てみたら、すごく考えさせられる映画で、私はおもしろかったです。詳しくはまた映画評などをご覧のうえ、ご鑑賞いただければと存じます。とはいえ、あまり先入観はない方がいいですね。

でも、ここで私がわざわざとりあげたのは、映画の中で出てくるレミとナタリーという少女とのいくつかの会話が心に残ったからです。ナタリーは薬物中毒で、レミにヘロインを調達するためにセバスチャンに雇われます。

◎歴史学者の大学教授レミと少女ナタリー

ここでは2つのエピソードを紹介しますが、なぜ取り上げるかというと、二人の会話の中に「享楽的社会主義者」を自認するレミの歴史家としての意味と矜恃みたいなものが垣間見えるからです。字幕はキツイので、吹き替え版のセリフを拾ってみました。

《episode 1》

レミ:歳を取って人生に執着し出すころ秒読み開始だ。残り20年、15年、10年。すると最後に何をしたいのかがわかってくる。(中略)先のことはわからんぞ。過去を理解できんのにどうやって未来を予言できる。自分の将来なんて誰にもわからんぞ。

ナタリー:執着しているのは今の人生じゃなく過去なんだね。

レミ:かもな…。

《episode 2》

レミ:せめて本を書くんだった。

ナタリー:何も書かなかったんだ。

レミ:あちこちにつまらん記事を書いただけだ。(中略)

ナタリー:どんな本を書きたかった?

レミ:収容所列島(ナチスの犯罪)だの、周期律だの。

ナタリー:名作を書く自信あった訳?

レミ:ないね。

ナタリー:なのに?

レミ:少なくとも書きゃあ後に残った。問題は何かを成し遂げることだ。できる範囲で自分の可能性を試したかどうかだ。そうすりゃあ安らかに眠れる。わしは失敗をした。

ナタリー:自覚しているだけましじゃない…。

ちなみにレミが亡くなった後、しばらくレミの部屋に住むことになったナタリーは、これらの本をすでにレミが書いていたことを知ります。レミの後悔はもっと深いものだったのでしょうね。ナタリーはレミが亡くなる以前から、レミとの触れ合いの中で麻薬と手を切ろうと努力し始めていました。そんな希望を抱かせて映画は終ります。

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