【史料学05】アーカイバル・ファイルボックスシステム


話は広がって、ついに「アーカイバル・ファイルボックスシステム(archival file box system)」などという造語を拵えてみました。早い話が古文書を中心とする史資料の保存用品とその用途について考えるということで、具体的にはTRCC製のファイルボックスを中心とした保存箱のことなのですが、何ごとも象徴となるようなスローガンなりキャッチネームが必要ですからね(^_^;)あくまでも仮ですが…。繰り返しますが、これは(1)史料保存用封筒、(2)封筒用フォルダー、(3)アーカイブ・ファイルボックス、(4)アーカイブ・ファイルボックス収納箱の4点からなっています。それでは4点の特徴について一つ一つみていきましょう。

(1)史料保存用封筒

史料保存用の封筒は、中性紙でできていることはもちろんのことですが、問題はその形状です。通常は状物(一紙物)用に長形の封筒、竪帳や横帳用に角形の封筒(史料の大きさに応じていくつかの種類が用意されることもあります)を用意します。前回も述べましたが、そもそもこの封筒の種類を分けるということが私自身疑問でした。長形の封筒では、ちょっとでも史料が大きくなると出し入れに苦労します。出し入れに苦労するということは、史料そのものを痛める可能性が高いということです。

何より、ファイリング・システムの考え方によれば、ファイルは同じ大きさに統一するというのが基本のはずです。史料=古文書の場合も実は同じで、その種類や大きさに関係なく収納する封筒は統一した方がよいのではないでしょうか。ということで、ここでは、すべて角0の中性紙封筒に統一することにしました。A3のファイルボックスに入るこれが最大サイズの封筒だからです。何より「大は小を兼ねる」ですね。そこで次に問題となるのは縦型か横型か、ベロ(フラップ)をどうするか、ということです。

結論から言えば、ファイルボックスの形状から取り出しやすさを考えて横型とし、今回は思い切って右側のサイドも切ってもらってL字形の封筒を作ってもらいました。もちろんベロなしです。こんな感じになります。

左上には史料の目録を印刷したシールが貼ってあります。これについてはまた後ほど詳しく説明します。

正直に言えば、やはり右サイドを切るというのは、史料が飛び出しやすいですからまずかったかなと思っています。また、封筒の上の方(天)の中央にU字形の切り込みを入れてもらえば、右サイドをカットしなくても封筒を開きやすいかなと思いますが、それはそれで別途費用がかかる話です。

(2)封筒用フォルダー

史料保存用封筒は、右サイドをカットしてもしなくても横型である場合はとくに、収納の際に不安定になります。そこでこれを補うためにフォルダーを活用することにしました。これは実際には、学園史資料センターでエンバ社のファイルボックスを効率よく使うための工夫として採用していたものです。素材は中性紙の厚紙で、これも特注品です。ファイルボックスに入れるとこんな感じになります。

フォルダーにはフラップというか、タブがつけてあって、これには史料番号を書いたり、シールを貼ったりすることができるようになっています。閑馬村関係史料の場合は、史料番号をブラザーのラベルプリンターで打ち出したものを貼り付けています。タブの天は8.5cm、地は10.5cmです。指でつまんで引っ張りあげるのにも便利です。また、フォルダーの中央部には4本の筋がつけてあり、いわゆるマチですね、これによって史料の大きさや量によって底の幅が調節できるようになっています。

(3)アーカイブ・ファイルボックス

さて、いよいよTRCC製アーカイブ・ファイルボックスです。東京修復保存センターの児島さんには、本当にいろいろと無理を言って作製してもらいました。

まずアーカイブ・ファイルボックスのサイズからみていきましょう。ファイルボックスはA3サイズになっていまして、外寸で高さ32.0cm、幅10.0cm、奥行き46.0cmとなっています。高さと奥行きはA3を基準としますから自然と決まってくるのですが、問題は幅でして、幅10cmとしたのは、女性でもぎりぎりつかめる大きさということでこのサイズにしてみました。ファイルボックスの前後には上から14.0cmのところに逆U字型の穴を空けています。これは空気を通すための穴となるとともに、配架されている際に指を引っかけて取り出しやすくするためでもあります。また、右側面には、上から10.7cmのところに高さ1cm、幅29.5cmの穴を空けて、ここに上蓋を差し込むようになっています。さらにファイルボックスの前後には上部に幅3.0cm、高さ2.5cmの耳がついています。これはアーカイブ・ファイルボックスを(4)の収納箱に入れた際に取り出しやすくするためです。ですので、配架するだけであれば必要はないのですが、基本的に保存は(4)の収納箱に入れることにしていますので、この部分を後から追加していただきました。そうしますと、こんな感じのファイルボックスになります。

さて、ここでとくに強調しておきたいのは、このアーカイブ・ファイルボックスの素材です。詳しくは本サイトの「史料学研究」→「史料の調査と整理」→「史料を整理する」→「史料保存箱の試み」にも掲載していますが、ここでは今少し詳しくみていきましょう。

児島さんの話によれば、アーカイブ・ファイルボックスの内ライナーには添加物の少ないピュアな紙を使用しているとのことです。Ph値は6.9です。これはなんと!ピザの宅配で用いられる食品用の段ボール紙だそうで、人間が食べるものに触れても問題のない紙ですから、史料=古文書にもよいのは当然!なお、接着剤も同様にピザの宅配用段ボール紙に用いられるもので、これまた安全性に問題はないとのことでした。

また、アーカイブ・ファイルボックスの外ライナーには、アブラヤシの混入紙が使われています。アブラヤシは、パーム油の原料で、1房あたり40〜50kgになる果実ができるそうです。この果実を搾り取った後の絞りかす、これをヤシガサというのですが、この処理がなかなか容易ではなく、問題なのです。もちろん、ヤシガサ自体は自然素材ですから、何の問題もありません。いずれにせよ、アーカイブ・ファイルボックスの素材は、この絞りかす=ヤシガサを利用するので環境にもよいというわけです。いわゆるエコ素材ですね。TRCC東京修復保存センターでは、他に笹を混入したファイルボックスも作製してもらいましたが、アブラヤシにせよ、笹にせよ、とにかく軽いのが特徴ですね。このアーカイブ・ファイルボックスには、収納した史料の史料番号を書いたシールが貼ってあります。

ちなみにTRCC製アーカイブ・ファイルボックスには、A3サイズの他にA4サイズのものもあります。

(4)アーカイブ・ファイルボックス収納箱

最後はアーカイブ・ファイルボックスを収容するための箱です。アーカイブ・ファイルボックスは、普通の段ボール箱などに比べると、とくに横幅が小さくなります。そうなると、とくに運搬の際に困りますので、これを収納するための箱も作ってもらいました。もちろん、アーカイブ・ファイルボックスごと保存するということも視野に入れています。大きさは、A3サイズのファイルボックスが3箱入るようにお願いしました。この結果、収納箱のサイズは、幅が33.0cm、高さが33.8cm、奥行きが46.8cmとなりました。

収納箱の上蓋は先の方が狭くなっていて、互いに重なるような形になっています。双方の蓋には先端から9.5cmのところに高さ2.0cm、幅13.5cmの穴が空けてあって、どちらかでも先端部分をこの穴に差し込めるようになっています。また、収納箱の両サイド(奥行き)の部分にも上から21.0cmのところに同じ大きさの穴が、両方の正面(幅)部分には、下から3.6cmのところに高さ2.0cm、幅10.5cmの穴が開いています。ここには上蓋を差し込むことができます。ちょうど上蓋を開いたときにその蓋を固定する役割を果たすわけです。さらに、この正面と両サイドの穴は、運搬する際に指をかけておける穴でもあります。中にアーカイブ・ファイルボックスを入れると以下のようになります。

児島さんのお話によれば、このアーカイブ・ファイルボックス収納箱の内ライナーには、酸の発生がマイルドな「無サイズ紙」という紙が使われているそうです。無サイズ紙は、吸い取り紙や濾紙などのようにサイジング(洋紙の製造工程において、パルプにコロラド物質を加えて紙繊維の表面や隙間を覆うことで、液体やインクが滲まないようにする処理のこと)の必要がない用途の紙で、pHは一般的に5~7といわれています。収納箱もまた食品包材用ということで、印刷適性を改善するためのサイズ剤を使用していないそうで、そのためにpH値も6.3と、段ボールの素材としては中性に近い値となっています。この値は、保存性が高いといわれている和紙と同程度のpH値ですので、酸の発生もマイルドで、保存性も期待できるということでした。

実際に触った感じもなめらかで、こちらも軽い容器です。それにお願いした4カ所の穴は、上蓋を閉じていても開いていても運搬の際にはやはり便利ですね。

◎まとめと課題

先にも述べましたが、古文書を中心とする史料の整理・保存では、(a)本来、平積みで保管するようになっていたものを縦置きにして保存するための工夫という点に留意し、(b)ファイル管理システムと同じように、収納するための封筒から箱に至るまでを統一した規格で保存していくことを心がけました。閑馬村関係史料の整理で用いた保存用封筒、フォルダー、ファイルボックス、収納箱の4点セットは、その具体的な試みでした。これを「アーカイバル・ファイルボックスシステム」とネーミングしてみたわけです。現在、閑馬村関係史料245点は、アーカイブ・ファイルボックス7箱に入れ、さらに収納箱3箱に入れて保管しています。

実際に使ってみますと、取り出して史料をみてみるにせよ、写真撮影をするにせよ、使い勝手や管理は実に楽です。ただ、何せ重装備ですから、何より費用的な問題はあります。また、これは245点とそう多くはない点数ですので、こうした3点セットでの処理が有効なのかも知れません。史料が大量になった場合は、当然のことながらアーカイブ・ファイルボックスが増えますので、整理や管理の面でどうでしょうか。旧来のような段ボール箱型の方がいいのでしょうか。でも、そのためにアーカイブ・ファイルボックス収納箱も用意しているわけですが、やはりこれもまた、費用が問題となるでしょうか。まだまだ課題は多いようです。ぜひともいろんな方々のご意見を伺いたいところです。

いずれにせよ、今回の史料整理に関する研究―実験は、教育研究所個別プロジェクト研究の一環であって、学園史資料センターの協力を仰ぎながら、史料管理学演習というウィンターセッションの授業で最終的な作業を行ないました。また、TRCC東京修復保存センターには、こちらの勝手な思いつきやわがままに耳を傾けていただき、それでも出し惜しみなく?!いろんなアイディアを提示してもらって、それらをつきあわせながらすべての保存用品を作製していただきました。それもまた楽しい作業でした。そうした意味では本当に恵まれた実験ではありました。

次回は、史料管理学演習における閑馬村関係史料の整理の模様についてお話ししたいと思います。これも先に述べました本サイトの「史料学研究」の中の「史料保存箱の試み」でも紹介していますが、もう少し詳しくお話ししたいと思っています。

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