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 北條秀司(ほうじょうひでじ)関係資料の調査・整理・研究を進めています。この資料群は、劇作家の北條秀司(1902-1996)が59年間の創作活動の足跡を記した貴重なものです。2000年から北條の一人娘である美智留氏が守ってこられた邸宅に調査に入り、そこにある資料整理をおこなってきました。現在、この資料群は東海大学付属図書館が寄託という形で受け入れており、2009年までで第四次の整理作業がおこなわれています。

近代文化研究

北條秀司関係資料

昭和26年頃 北條秀司

昭和26年頃 北條秀司
(北條美智留氏提供)

北條秀司という演劇界の巨星の資料に出会ってすでに10年以上が経過しました。北條秀司とその作品の簡単な紹介、東海大学が資料を預かることになった経緯、そして資料整理の現状と特徴、成果などについて紹介します。

この資料群については、資料の整理と活用という視点から「演劇アーカイブズの可能性」というものを考えています。これは北條秀司という一人の劇作家の資料全体を資料群としてどのようにとらえるかという、アーカイブズとしての資料への接し方についてです。とくに近現代個人については、何を資料とするのか、必ずしも明確な指標がある訳ではありません。それをどのような視点で、北條のような著名な人物の資料群を評価・整理し、次代に伝えていけばいいのか考えていかなければなりません。北條という人は、自分の足跡を積極的に残そうとした希有な人物でもあります。だから何が資料として残り得るのか、それをらをどのように整理していけば活かすことができるのか。そのこと自体がアーカイブズ学にとって新たな試みになると考えています。

今後は、整理方法の工夫や整理した資料をどのように公開していくかという大きな課題もあります。また、この資料群を中核として、関係する人物や団体組織などの資料を調査し、収集していくことも必要でしょう。収集する資料は、資料群としてまとまった形での収集・整理が望ましいですが、たとえ点数が少なくとも、この北條秀司資料を中心に考えれば、それらも一つの「資料群」として評価されてもいいと思います。ネットワークとして資料の輪を広げていくこと、それが演劇アーカイブズの新たな可能性であるといえるかもしれません。

北條秀司資料の整理を通してみた演劇アーカイブズの可能性は、近現代の大衆文化研究そのものの可能性であり、その基礎作業でなければならないと思います。ゆえに、このサイトにおいて情報の公開など試み、近現代の文化研究の発展に寄与できればいいのではないかと考えています。