HOMEプロジェクト研究 > 2007~2009年度プロジェクト|史料叢書「幕末風聞集」|解説|体裁について

2007~2009年度プロジェクト
史料叢書「幕末風聞集」(史料集刊行)

解説

1.「幕末風聞集」の体裁について

「幕末風聞集」全5巻は、平成元年(1989)に東海大学付属図書館が購入した古文書である(請求番T/210.58/F/1~5)。本史料の伝来やそもそもの作成者や所蔵者など、基本的な情報はよくわかっていない。また、ここでいう「幕末風聞集」はあくまでも便宜上用いた通称であって、史料の表題そのものではない。内容について、詳しくは第3章に譲ることにして、ここではまず、「幕末風聞集」の基本的な体裁についてまとめておきたい。

全5巻と書いたが、実際にはそれぞれの表紙には、第一番から第五番まで番号表記がされている。以後、本史料の各巻については、この番号表記で呼ぶこととする。

5巻とも縦横の寸法はほぼ同じであり、いわゆる半紙判(250mm×170mm)の範疇にはいる史料である。ただし、各巻の厚さは異なっており、第四番がもっとも厚く、丁数、頁数も一番多くなっている。丁数で次に多いのは第一番であるが、厚さは第三番とほとんど同じで、丁数もほとんど変わらないものの、翻刻した頁数では、第三番が19頁分多くなっている。また、第一番と第五番は、翻刻した頁数はほぼ同じであるが、丁数は38丁分第一番の方が多い。単純にもっとも字が細かく、情報量が多いのが第五番で、逆にもっとも少ないのが第二番ということになろう。いずれにしても、それぞれの巻は、必ずしも統一した書式・様式で書かれたものではないということである。ただし、その中でも第二番から第四番まではある程度の統一性を認めることができる。それは各巻の表紙をみても明らかである。

第二番から第四番の表題は基本的に「風聞集」となっており、その後にそれぞれの内容を要略した表題が書かれているなど、形式がまったく一緒である。これに対して第五番は「世評風聞集」となっていて、その後には要略表題もあるが簡略である。筆跡をみれば、これも第二番から第四番までは同じで、第五番もほぼ同じと考えられる。これらに比べると第一番は、表題のあり方からしてもかなり異なっていることがわかる。筆跡もまた異なっているが、ただし、「第壱番」の文字だけは第二番以降と一緒で、後から書き加えたと考えられる。いずれにしても、第一番だけは、第二番以降とその成立からして異なっているように思われる。表題でも明らかなようにこの巻は、嘉永6年(1853)のペリー来航についての記事を中心としたものである。

体裁からみる限り、ここでは、第二番・第三番・第四番が「風聞集」の中心であること、第五番はこの続編ではあるものの、形式が変わってきていること、また、第一番は第二番以降と大きく異なっていることを確認しておきたい。

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