横浜市歴史博物館で秋に開催する緒形拳さんの展覧会の件で、今日は『緒形拳を追いかけて』(ぴあ 2006年)の作者である垣井道弘さんにお目にかかって、お話をうかがってきました。『緒形拳を追いかけて』は、緒形さんの初めての評伝でした。
垣井さんが緒形さんの密着取材をはじめたのは、1985年の「MISHIMA:A Life in Four Chanpters」が撮影された時のことだそうです。言わずもがな、小説家の三島由紀夫を扱った映画です。三島は、1970年11月25日に東京は市ヶ谷の陸上自衛隊東部方面総監部に乱入し、自衛隊員を集合させてバルコニーで演説した後、割腹自殺をして果てます。当時は小学6年生でしたが、担任の先生から三島由紀夫が亡くなった話と、そのニュース映像は今でも鮮明に覚えています。
この不世出の小説家を日米合作で映画化したのが「MISHIMA」でした。何せメンバーがすごいのです。制作総指揮が「地獄の黙示録」などの作品で知られるフランシス・F・コッポラと「スターウォーズ」シリーズのジョージ・ルーカス、監督が「タクシードライバー」の脚本で知られ、大の小津安二郎、三島由紀夫ファンであったポール・シュレイダーです。さらに共演者が、塩野谷正幸、大谷直子、加藤治子、坂東八十助(十代目坂東三津五郎)、佐藤浩市、萬田久子、永島敏行、勝野洋、根上淳、池部良、沢田研二、横尾忠則、倉田保昭、平田満、左幸子の皆さん…。
この映画はカンヌ映画祭にも出品され、「最優秀芸術貢献賞」を受賞されています。ところが、日本では未公開なのですね。内容が内容で、右翼を刺激することを恐れたとかいろいろと言われています。でも、垣井さんはちゃんと本にされています。
垣井さんは何よりメーキング本を書きたかったのだそうです。そしてメーキング本を書くならば、この両巨匠を制作総指揮とするこの作品だと考えられたとか。そのために仕事を辞めてまで、制作担当の山本又一朗さんに頼み込んで密着取材を敢行したのだとか。すごい情熱です。まだ、日本にメーキングという概念すらなかった時代です。だから、これは日本で初めてのメーキング本なのですが、映画自体は日本では公開されなかったという、なんとも皮肉な話です。垣井さんから『MISHMA』(飛鳥新社 1986年)をいただきましたので、じっくりと読んでみたいと思います。
お話を伺って、ぜひ「MISHIMA」を観てみたくなりました。そしてできればこの幻の作品を展覧会に合わせて上映できないかと夢を見るのです。
追伸:海外版のBlu-rayとDVDは購入できるのですね。早速、Amazonでポチしてしまいました(^^;)
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