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日葡辞書はおもしろい!

『日葡辞書』というのをご存じでしょうか?『葡』は「葡萄」の「葡」ではありませんよ!葡萄牙=ポルトガルのことです。つまりポルトガルで作られた日本語の辞書ということです。現在は岩波書店からこの翻訳本が出ています。と、思っていましたが、今は岩波書店でオンデマンド出版になっているのですね。注文に応じて印刷してもらう形です。

こちらは私が買っておいた『邦訳 日葡辞書』です。索引つきで、定価が26,000円になっていました。消費税が3%の時代ですね。私のは第2刷で1990年8月30日になっていました。次女が生まれる前ですね(^_^;)

オンデマンド版ですが、本文が27,500円、索引が11,000円で合せると38,500円になります。それぞれのURLは以下の通りです。

本文…https://www.iwanami.co.jp/book/b266617.html

索引…https://www.iwanami.co.jp/book/b266618.html

Amazonや楽天ブックス、紀伊國屋書店などで注文できるそうです。また、八木書店からは66,000円で販売されています。

この『日葡辞書』なにせ本篇が1603(慶長8)年に、翌1604年に補遺が共に日本イエズス会長崎のコレジオで印刷刊行されたものだそうです。徳川家康が征夷大将軍となって、江戸に幕府を開いた年ですよ!凄いですね。もちろん、翻訳本ですから微妙なニュアンスの違いはあろうかと思いますが、とにかく戦国時代の生きた言葉が収められている…それだけでもちょっと間道ものです。

まぁ~江戸時代の、それも後期を専門とする私がなんでわざわざ今ごろ『日葡辞書』を調べているかというと、「江戸学と現代社会」の授業のためです。とくにかぶき者のことを中心に、当時の兵士や軍団関係の言葉を調べています。

かぶき者はCabuqimonoと綴られています。カブキモノ(傾きもの)で結局はCabuqi,uを引けということになっていて、「ひどき常軌を逸した人。または,時分に許された程度以上の勝手気ままをする人,または,急ぎあわてて返答をする人,,あるいは,知らせなどをまだよく危機もしないうちに,度外れた喜び方をする人。」となっています。後半は少しわかりづらいですが、ほぼ正確な情報かなと思います。

こんな風にして、武士や若党、中間、雑兵等々を調べています。ただ、侍は出てくるけれど、地侍(じざむらい)や土豪(どごう)は出て来ない。国人は「こくじん」と読まないで「くにゅど」と読むなどおもしろいですね。ちなみに国人の訳は「その国土着の人々」となっています。また「国衆(くにしゅ)」というのもあって、国の主だった人々のことで、豊後の国で使われている語」とあります。ほかにも「国侍(くにざむらい)」というのもあって「国の武家貴族(武士)」となっています。

どうしても調べてみたかったこと!「武士道」は案の定ありませんでした。「武道」というのはあって、「(武士の道)武術,または,兵学」となっています。専ら技術のことですね。ほかに「武徳」という言葉はあって、「武士の幸運,あるいは,上首尾」とありました。

近世史の立場からすれば、「武士道」は戦国時代ではなく、それが終わった「江戸時代に成立する」と考えた方がやはり納得がいきますね。

投稿者プロフィール

馬場 弘臣東海大学教育開発研究センター教授
専門は日本近世史および大学史・教育史。
くわしくは、サイトの「馬場研究室へようこそ」まで!
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