復刊『奇祭巡礼』

お知らせ
復刊『奇祭巡礼』

この度、劇作家・北條秀司著作の『奇祭巡礼』が京都の淡交社から復刊されました。このブログでもたびたび紹介しておりますが、北條先生は、昭和を代表する劇作家です。明治35年(1902)11月7日に大阪で生まれ、日本電力株式会社大阪本社から、箱根登山鉄道株式会社設立のために出向すると、「半七捕物帳」の作家として有名な岡本綺堂に師事し、昭和12年(1937)に新国劇で「表彰式前後」で劇作家デビューします。もっとも有名な作品は、昭和22年(1947)に新国劇の看板俳優の辰巳柳太郎を主役の坂田三吉にあてた「王将」でしょう。平成6年(1996)に93歳で亡くなるまでの59年間の劇作家人生で創作した戯曲の数は220編を超えています。緒形拳さんの恩師であり、仲人でもありました。このため昨年10月から12月にかけて横浜市歴史博物館で開催された「俳優緒形拳とその時代-戦後大衆文化史の軌跡-」展でも特別コーナーを設けました。詳しくは今年度本学文明研究所の紀要『文明』25号にこの展覧会の講演録を載せる予定ですので、ご覧いただければと思います。こちらは3月末に刊行の予定です。

北條先生はとにかく無類の祭り好きで、公演の合間、移動の途中、そして祭りを見ることそのものを目的として、日本中の祭りを見て回っています。

こちらが表紙です。本日送られてきました。漫画家でイラストレーターのみうらじゅんさんが帯を書いていらっしゃいます。

ここでいう「奇祭」は、北條先生が実際に見た全国の祭りの中から「少し風変わり」と思ったものを取り上げて編集されたものです。刊行は昭和44年(1969)8月で、戦後の高度経済成長の末期になります。本書のあとがきで先生は「ニュースを見ていると、いま日本は国を挙げて国風破壊作業をやっているような錯覚を起こす」と書かれています。高度経済成長の中で次第に変わっていく風土をみての感慨でしょうが、そうした中で「諸国の祭り行事をみてあるいていると、美しい国風が元禅として保持されている」とあります。その後の日本の「発展」をみていくとそれもまた大きく様変わりしています。ここに書かれた祭りが今どうなっているのでしょうか?

こちらが目次です。全国から選りすぐりの18の祭りが取り上げられています。私に1番関係があるのは「相模国大磯座問答」ですかね。こちらは神奈川県大磯町の六所神社でゴールデンウィークに開催される祭りです。大磯は私が市町村史の編纂事業ではもっとも長く関わったところですから!大磯では左義長(どんど焼き)も有名ですね。んが、私はどれも見にいったことがありません(^^;)ちょっと後悔しています。

さて、目次にもありますように、復刊にあたっては私が解説を書かせていただきました。編集者からの依頼で「資料から見る劇作家・北條秀司」というタイトルで書いています。2000年に始まった北條先生の資料の整理作業から得た知見をちょこっと書いただけです。祭りそのものを論評することなんでできませんし。

それにしてもこうした文章を書かせると北條先生は本当にうまいです。軽やかなタッチで、祭りの魅力を紹介されています。興味のある方はぜひ手に取ってみてください。定価2000円です(税抜)

投稿者プロフィール

馬場 弘臣

馬場 弘臣東海大学教育開発研究センター教授
専門は日本近世史および大学史・教育史。
くわしくは、サイトの「馬場研究室へようこそ」まで!

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