今年のプロ野球日本シリーズ、ヤクルトスワローズVs.オリックスバッファローズは熱戦続きですね。第1戦と第2戦が緊迫した投手戦で、第3戦がシーソーゲーム。そして第4戦は再び投手戦になって2-1でスワローズが勝ち、3勝1敗で日本一に王手をかけました。エラーと無駄な四球を出した方が不利というは事実のようですね。その度にまさに勝利の女神が行ったり来たり忙しいようです。でも、これでスワローズがだんぜん有利になったことは間違いありません。
そこでまたメジャーリーグの大谷翔平選手の話になります。大谷選手、アメリカンリーグのMVPで9つ目の受賞だそうですね。その時に公開されたインスタグラムがネット上で話題になっていました。失礼ながら引用させていただきます。
写真がなんともおしゃれですよね。3塁側に引き上げてくる大谷選手の前に「THANK YOU」の文字。そして本来は英文なのですが、MVP受賞に対して祝福してくれた皆さんへの感謝の気持ちが述べられています。そもそもこんな写真をいつ、誰が撮ったのでしょう?また、それを選ぶセンス…。そうしたセンスに欠けている人間としては羨ましい限りです。
大谷選手のMVP受賞に対してイチローさんがこんな言葉を贈っていました。
アスリートとしての時間は限られる。考え方は様々だろうが、無理はできる間にしかできない。2021年のシーズンを機に、できる限り無理をしながら、翔平にしか描けない時代を築いて言って欲しい。
これに対して大谷選手は、無理をしろというのはけがとかいった問題ではなくて、自分が本当にトップアスリートとしていられる時間は限られているのだからその時間、恐らくはこれから5年か7年ということになるだろうけれど、その時間でできることは何かを考えて「無理」をしなさいという意味として捉えている、といったニュアンスの言葉で応えていらっしゃいました。メジャーリーグにパワーではなくて、スピードとエレガントさという形で一時代を築いたイチローさんならではの言葉ではないかと思います。
「無理はできる間にしかできない」
味わい深い言葉だと思います。宮崎駿監督の「風立ちぬ」映画の中で、主人公に空想の中で語りかけるカプローニという人物がいます。カプローニは実在の人物で、ジョヴァンニ・バッティスタ・カプローニ(1886年~1957年)というそうです。イタリアの航空機技術者として有名で、イタリアにあった航空機・自動車・オートバイメーカーのカプローニ社の創業者としても知られています。主人公の堀越二郎が憧れた人物として描かれています。そのカプローニが堀越に語りかけます。
「創造的な人生の持ち時間は10年。君の10年を力を尽くして生きなさい」と…。
そして最後には、君は君の10年を力を尽くして生きたかと問いかけます。その言葉もすこぶる重いですね。
還暦を過ぎてこの歳になるとふと、残された時間はどれくらいかなと考えます。父は80歳で亡くなりましたから、同じであれば17年ほど。緒形拳さんは71歳で亡くなられましたから、それだとあと8年…。
実際の稼働時間ということであれば、アスリートに比べればもちろん、カプローニの言葉を考えたとしても研究者はもう少し長くの時間が与えられているかと思います。ただ、自分がもっとも頭がさえていたなと思うのは、1990年代の後半から2000年代のはじめにかけてでした。今、当時のノートをひっくり返してみても、当時何を考えていたのか、どうしてこういう思考にいたったのかがわからなくなっています。その10年を自分は何をやっていたのだろうと思うことがあります。それは、この時にもっと論文にしておくべきだったという後悔からです。定職についてもいいようにと自治体史ではせっせと史料を集めておきましたが、やはり発表できるときにしておかなければ、あとからではまとまるものもまとまりません。それを集めていた頃の研究レベルと今では違っていますから、何よりその時に1番旬なテーマを考えていたはず…。だから、若い研究者の皆さんにはとくに言いたいですね。
「論文は書けるときに書いておきなさい。それが旬である時間はそう長くはないのだから」と。
でも、決してまだ諦めたわけではありません。合同会社オフィス野の花を、野の花出版社を立ち上げたのも人生の総まとめにするためです。それでも時間は限られています。恐らくフルで使えるのは長くて10年。それまでに何を残せるか。勝手ながら、大谷選手と競争したい気分です。そんな勇気をもらった2021年でしたね。まだ終わってはいませんが…。
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