電子書籍時代の史料翻刻《番外編2》 実現!一太郎でEPUB3.0!


それは私にとっては超が3つ以上つくくらいにビックなニュースでした。本日、JUSTSYSTEMからのメルマガで来年の2月10日に一太郎2012承(しょう)が発売されることを知ったのですが、そこで電子書籍の規格であるEPUB3.0の作成に対応するというのです。改めていうもまでもないことですが、EPUB3.0は例えばアップルのipadやソニーのリーダーなどで読める(もちろんPCでも…)電子書籍の規格で、日本語独自の縦書きやルビ、数字の縦中横などに対応するものです。このブログで「電子書籍時代の史料翻刻」と題して書いたシリーズの最後、15回目(8月10日)に「EPUB3.0への期待」という一文を書きました。ちょうどAdobe社がInDesignというDTPソフトでEPUBフォーマットの出力に対応すると発表した後で、これを受けて一太郎などのワープロソフトで「EPUBフォーマットへの出力などができるようになるのでしょうか。そう願いたいものですね」と書いたのですが、まさか本当になるとは!それもこんなに早く対応してくれるとは!!いや、本当に嬉しい限りですね。

JUSTSYSTEMは毎年2月10日にバージョンアップするのがここ数年の通例になっています。本年は「一太郎2011創」と称して、かなりメジャーなバージョンアップが行なわれたのですが、正直言えば、確かに使いやすくなっている点も多いのですが、何かごてごてして、一太郎10の方がシンプルで使いやすいなと思っていました。でも、もうこのEPUB3.0作成への対応だけでも私には大きな価値があります。さらに、漢文の返り点や畳字へも対応するという。返り点などは、キーマクロを使って一二点や上下点を打てるように工夫して、それをキーに割り付けたり、畳字は外字をつくっていたのですが、一太郎側で対応してくれるというのです。これで授業などのテキスト作りや資料作りも楽になります。いや、そもそも今は、江戸時代の文書でも返り点の付け方を教えること自体に苦労していますから、教え方も変わってくるかも知れません。まさにわれわれの業界のためのバージョンアップのような…。まぁ、あまり過度に期待しない方がいいかもしれませんけれどね。でも、私は早速、予約を入れました。

◎閑馬学校関係史料もEPUBUで!

このサイトを立ち上げるきっかけとなった、本学教育研究所の個別プロジェクト研究「近代村落小学校の設立に関する基礎的研究」では、明治7年(1874)に栃木県安蘇郡閑馬村(現佐野市)に開校された閑馬学校の史料を翻刻する予定で、電子書籍でも公開することを目指しているのですが、どうやら実現できそうです。現在、閑馬学校の史料については、栃木県からの通達を書き留めた「御用留」や「御布令留」の類や学校取調書などの史料を筆耕しているところです。もちろん、一太郎で筆耕をお願いしています。活字の史料集ももちろん一太郎で編集して刊行する予定です。それがそのまま電子書籍にできて公開できるならば、それこそ願ったり叶ったりです。

でも、先に対応してくれたのが一太郎でよかったと思います。多勢に無勢で、今はもうワープロソフトといえばマイクロソフトのWord一色です。え、まだ一太郎ってあったの?ならまだしも、若い人には、それ何ですか?とすら聞かれかねません。でも、使い勝手はもちろんのこと、文書としての仕上がりも一太郎の方が断然優れています。とくに縦書きの文書を作成することに関しては、行間の処理やインデントの使い勝手など雲泥の差があります。Wordはいまだ縦書きでは左から右にしかスクロールできませんし…。ジョブズ流にいえば、縦書きに関しては「センスがないんだ。足りないんじゃないんだ。全くないんだ。」と言いたいくらいです。これは実感です。もっとも、こちらが求めるレイアウトのレベルをどれだけ実現してくれるかについてはまだまだ未知数ですが…。

いずれにしても、電子書籍時代の到来に寄せた期待。何度か述べましたが、自治体史(市町村史)編纂のブームも去って、不況下で史料集の刊行もままならず、史資料館が整備されても、あるいはされたがゆえに大量に史料をみることがかえって困難になったという現状で、多くの史料が電子書籍として翻刻されて流通するようになれば…という期待が少しでも叶うことを願ってやみません。それが歴史学の発展に寄与することはもちろんですが、もっと言えば、私たち日本人はもっと、正確な根拠=データ=資料(史料)に基づいて思考し、判断する習慣をつける必要があるのではないかと考えるからです。

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