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箱根八里の再生事業

本日から本学でも一般選抜入学試験が始まりました。入試の多様化にともなって、今年から試験期間も4日間になりました。朝、車で入構すると息せき切って走って行く受験生がいました。湘南キャンパスは駅から歩けないわけではないですが、遠いし、登り道でもあるし、中に入っても広いしで、たいへんです。どこの大学の受験生たちも頑張ってほしいです

さて、昨日のことになりますが、箱根の旧街道整備事業の委員会が、箱根町立郷土資料館で開催されました。いわゆる箱根八里ですね。昨日はなかなか天気がよく、箱根湯本も暖かったです。久しぶりに小田急で、それも直通のあるロマンスカーで行って参りました。

箱根八里には江戸時代、石が敷かれていました。大部分は道路工事や開発でなくなっていますが、畑宿や箱根関所など5か所ほど石畳が残っている場所があります。とはいえ、崩れかけたり、従来の工法とは違う工法で敷き直したりしている場所もあって、これらの石畳の修復と保全の計画を立てる委員会です。箱根八里は、Kmになおせば、約32Kmですか。小田原宿から箱根宿を越えて三島宿までですから、箱根町だけではなく、静岡県の三島市や函南町も一緒の事業です。そもそも東海道の宿の間は基本的に2里(約4Km)とされていましたから、倍ですね。箱根八里は、今の国道1号線に含まれていて、正月の箱根駅伝でも有名ですが、ほぼ江戸時代の道筋がそのままたどれる貴重な街道なのです。

ただ、そうなると一体いつの時点の石畳にするのか?そもそも江戸時代当時の工法はどんなものだったのか?石の敷き方はもちろん、排水溝の作り方、道幅等々いろんな問題があります。調査で石を敷いた形跡があれば新たに敷くことも考えなければなりません。

それだけでなく、これからのこうした事業は洩れなく観光との連携が必要となります。現在の修復計画だけなく将来にわたる永続的な保全のためにも、地域住民のみなさん、企業、そして箱根を訪れる観光客のみなさんと一体となってやっていく必要があります。箱根は日本でも有数の観光地、温泉地ですから、インバウンド効果も大いに期待されています。というより、もうそれ自体は前提なんですね。文化財保護法が改正されて、文化財にも観光の視点を入れることが当たり前にもなってきました。それもまた時代の流れです。

委員長があるアンケートで箱根を訪れた理由を聞いたところ、箱根の歴史よりも自然を楽しむことが1番だったと仰っていました。私ら歴史畑の人間はどうしてもこうした問題は歴史の問題に還元したくなりますが、いやいや旧街道の楽しみ方は多様なのだと改めて考えさせられました。さらに、箱根八里だけでなく工事のアピールの仕方もインターネットやスマホを活用した多様なものが求められます。とても自治体や文化庁だけの事業ではなくなりますね。

ともあれ、これまでは基本計画の策定で、修復計画は現在のところ10か年ということでした。それまで生きているのか(^^;)それで終わるのか?何より10年も経てば時代もまた大きく変わっていることでしょう。月への移住や火星への有人探索が模索されている時代です。それらが地域の歴史や文化や自然などとどのようにかかわってくるのか?興味は尽きません。

投稿者プロフィール

馬場 弘臣東海大学教育開発研究センター教授
専門は日本近世史および大学史・教育史。
くわしくは、サイトの「馬場研究室へようこそ」まで!
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