歴史を学ぶ技術
史料を読む
古文書を読む
「歴史の史料になるような古い書付や書類の類を「文書」と書いて「もんじょ」と読み、また「古文書」(こもんじょ)ともいう。ただし、「文書」または「古文書」が古い書付(書類)をさすという場合、これは広義の意味で、狭義の古文書には差出人と受取人が存在しなければならない。つまり狭義の古文書とは、Aの意志をBに伝達するために、Aが文字を用いて作成したもの(文書)のうち古いものを意味する。したがって、受取人のない一般の著述・日記・編纂物は「記録」として、本来は「古文書」と区別される。
古文書のうち「近世」に作成されたものを「近世文書」(きんせいもんじょ)とよんでいるが、この「近世」の時代区分については諸説があって確定したものではない。ここでは、とりあえず徳川幕府が開かれた慶長8年(1603)から廃藩置県が行われた明治4年(1871)までの時期としておく。この時期に作成された「近世文書」では、狭義の「古文書」以外に記録類や帳簿類まで含めてよぶことが多いのが実情である。これは、たとえば名主などの村役人が領主・代官の通達を書きとめた御用留は記録であるが、個々の通達は文書といえるなど、近世文書では文書と記録との区別が必ずしも明確にできず、帳簿形式のものが多いなど、中世までの文書とは異なった新しい様式の文書・記録類が多いためである。
いずれにしても、近世以前の社会では言文不一致を原則としており、とくに公用文書を作成する場合、規則に応じた書き言葉と書き方をマスターする必要があった。その中でも近世という時代は、広く一般の庶民階層まで文字が普及した時代、文字による支配を前提とした社会であったから、その書体も文体も高度にマニュアル化されたものである。したがってその方法を学べば、誰でも比較的容易に近世の文書が読めるようになる。
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