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「あん」 ハンセン病に寄り添って…。

先にも書きましたように、日曜日(28日)は、早稲田大学の大隈記念講堂に朗読劇を聴きに行きました。タイトルの「あん」はあんこのことで、ドリアン助川さんの同名小説を朗読劇にしたものです。作者のドリアン助川さんと中井貴惠さんが朗読をされていました。中井貴惠さんは改めて言うまでもなく、中井貴一さんのお姉さまです。「あん」はハンセン病についてのお話しです。癩病(らいびょう)とも言いますね。ハンセン病は、らい(癩)菌による末梢(まっしょう)神経の慢性細菌感染症で、顔面、手足の変形と、高度な皮膚症状を伴います。以前は、遺伝病と考えられていた時代もあり、人類最初の疫病とみられていました。以前は強制隔離政策が取られていて、今回の催しはハンセン病に関する啓蒙活動の一環でした。

物語は、千太郎という青年が、満開の桜の下でどら焼き屋を営んでいるところから始まります。千太郎は、昔起こした傷害事件の賠償金で借金があり、その支払いのためにどら焼きを焼いているのでした。ある日千太郎の店に徳江という老婆が、アルバイトの看板をみてやってきます。600円の時給を200円でもいいと。で、千太郎の焼くどら焼きは皮はまあまあだけれど、餡がおいしくないとアドバイスをします。聞けば業務用の餡を使っているとのこと。それじゃダメよ、餡は自分で作らなきゃ。婆さんできるのかよ。あたしは50年餡を作ってきたのよ。これよかったら食べてみて。と言って自分で作った餡を千太郎に渡します。徳江の指が曲がっていたことから、千太郎はゴミ箱に捨てるのですが、気になって舐めてみたところ、これがもの凄く美味しい。で、後日訪ねて来た徳江を餡作りに雇うことにします。

それから千太郎のどら焼き屋は開店前から並ぶほど評判を呼びます。しかしながら、店に出てきた徳江がハンセン病だということが知れて次第に人が来なくなってきます。徳江が店を辞めてしばらく経って千太郎は、常連客だった中学生のワカナと療養所を訪ね、徳江の親友の佳子と療養所での生活、これまでの人生について話を聞かされるのですが、その次に訪ねたときには、徳江は3日前に亡くなったと佳子から聞かされ、徳江が使っていた餡作りの道具を渡されます。ハンセン病で療養所での生活を余儀なくされたからこそ、自然を感じる心や人生の意味について教えられた千太郎とワカナ…。

それにしても、中井さんは老婆の徳江と中学生の若菜の二役をもの凄く上手に使い分けて、さすがです。長いブランクがあって、今は女優に復帰されているそうですが、なかなか見かけないのが残念です。せっかくですから、その後に上映された映画も見てから帰ることにしました。

千太郎を永瀬正敏さん、徳江を樹木希林さん、佳子を市原悦子さんが演じられていたのですが、とにかくみなさん演技がうまい。ただでさえ涙もろいのに涙腺がゆるみっぱなしでした。河瀬直美監督の作品ですから桜のシーンはもとより、映像がきれい!と言っても、河瀬監督作品を観たのは初めてでしたが…。秦基博さんの主題歌もよかったですね。そうそうワカナ役は樹木さんのお孫さんだそうです。ドリアン助川さんの原作かこの映画(2015年公開)をぜひお勧めしたいと思います。

話はまったく変わってしまいますが、私は断然こしあん派です。「あん」のどら焼きはつぶあんでしたが…。ま、どら焼きはつぶあんですよね。こしあんが好きなのは、母が作る餡がこしあんだったからです。映画では餡を作るシーンが丁寧に描かれていました。前日に小豆を水に浸し置くところから始まります。母もそう、前日に水に浸して置いて、小豆を炊いて漉してという面倒な作業をずっとやっていましたね。おはぎもそうですが、私の実家の福岡、八女地方で言うところの「いげん葉まんじゅう」を思い出します。「いげん葉まんじゅう」は「さんきらまんじゅう」とも言って、あんこを入れた小麦粉のもちを「いげん葉」と私らが呼んでいる葉っぱでくるみます。母とよくみかん山にいげん葉を摘みに行ったものでした。いげん葉まんじゅうでもおはぎでもなんでもいい…、おふくろの作った餡が無性に食べたくなってしまったのでした。

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投稿者プロフィール

馬場 弘臣東海大学教育開発研究センター教授
専門は日本近世史および大学史・教育史。
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